2016 Fiscal Year Annual Research Report
運動効果獲得の個体差を理解するための骨格筋エピジェネティクス研究
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16H03263
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Research Institution | Matsumoto University |
Principal Investigator |
河野 史倫 松本大学, 大学院 健康科学研究科, 准教授 (90346156)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
二村 圭祐 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (00462713)
小野 悠介 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 講師 (60601119)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 骨格筋 / 個体差 / エピジェネティクス / 筋損傷 / 加速度刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
本テーマは、運動効果の獲得や病気のなりにくさにおける個体差を解明することを目的として、過去の様々な生活習慣が将来の刺激応答性を変化させるのか検討を行っている。平成28年度は、筋損傷後に再生した骨格筋線維の機能変化について検討を行った。骨格筋線維の形成は、胎児期の筋発生時と成熟筋ではソースになる細胞が異なることが知られている。胎児期から筋線維に融合し残存している筋核の有無によって筋機能がのように変化するのか追究するために一連の実験を実施した。初めに、成熟した動物の骨格筋において胎児筋核が残存しているか検証するため、ドキシサイクリン誘導性に骨格筋特異的にEYFPを発現するマウスを交配した(長崎大学)。この遺伝子組換えマウスの妊娠中にドキシサイクリンを投与し、出生後は通常の水で飼育した。その結果、13週齢においても骨格筋からEYFPが検出されてことから、胎児期に筋分化した筋核が成熟筋でも残存していることが明らかになった。しかし、カルジオトキシン注入により損傷・再生した筋ではEYFPの発現が消失しており、筋再生が生後に分化したサテライト細胞によって起こったことが分かる。次に、成熟ラットを用いてヒラメ筋に筋損傷を誘発した後8週間再生を促し、協働筋腱切除による過負荷を与えた。正常筋では約30%の筋線維肥大が起こったが、再生筋は肥大しなかった。筋タンパク質合成に重要な関与をすると考えられるIgf1rの遺伝子発現も、同様の傾向を示した。Igf1rの遺伝子座では転写開始点付近においてアセチル化ヒストンの分布が認められるが、再生筋では顕著に低下していた。このような肥大応答性およびヒストンアセチル化の低下は、新生児ヒラメ筋由来の細胞を移植することで改善された。以上の結果から、胎児期に出現する筋系細胞ではヒストンアセチル化レベルが高く、転写応答しやすいことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
損傷後に再生した骨格筋線維の肥大応答性低下について詳細を明らかにし、論文発表まで至ることができた。さらに次のステップとして、筋再生中の筋機能低下を予防する介入実験もすでに実施済みであり、現在サンプルの解析を行っている。介入方法として用いているのは加速度刺激であり、本テーマの主幹である「個体差を発生させる履歴」の1つとして検討する予定であった。当初の計画であれば2年目に実施予定の実験であったが、再生筋の機能評価実験が順調に進んだため、前倒しに実施している。詳細なデータは現在分析中であるものの、加速度刺激による変化も認められていることから、本テーマの進捗は当初計画よりも進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況でも述べたように、現在加速度刺激が筋機能にどのような影響を及ぼすのか検討を行っている。筋損傷からの再生過程における介入、または加速度刺激を長期間受けた履歴を持つ骨格筋の運動応答性について検討している。さらに平成29年度は、食習慣の違いによる刺激応答性の変化について検討を行う予定である。マウスに高脂肪食を長期間摂取させ、その後通常飼育に戻し、さらにその後の加齢による影響の違いを検討する。また、前年度の研究で見つかった遺伝子要因について、ゲノム編集技術を用いて成熟筋でシミュレーションし、筋肥大や運動によるエネルギー代謝工場における役割を検討する。ゲノム編集を行うための遺伝子組み換え動物はすでに搬入済みであり、現在交配中である。
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