2018 Fiscal Year Annual Research Report
運動効果獲得の個体差を理解するための骨格筋エピジェネティクス研究
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16H03263
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Research Institution | Matsumoto University |
Principal Investigator |
河野 史倫 松本大学, 大学院 健康科学研究科, 准教授 (90346156)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
二村 圭祐 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (00462713)
小野 悠介 熊本大学, 発生医学研究所, 准教授 (60601119)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 骨格筋 / エピジェネティクス / 個体差 / 運動 / 筋損傷 / 糖尿病 |
Outline of Annual Research Achievements |
若齢期における高脂肪食摂取の影響がその後どの程度残存するのか検討した。1ヵ月齢の雄マウスに3ヵ月齢までの期間、高脂肪食(総エネルギーの約60%が脂質由来)またはコントロール食を摂取させた。3ヵ月齢からは通常食に戻し、13ヵ月齢までの期間毎月ハングテストによる筋力評価およびグルコース液腹腔内投与による耐糖能評価を実施した。高脂肪食摂取により筋力は有意に低下し、その後5ヵ月間低下したまま保たれた。空腹時血糖は高脂肪食摂取により約1.5倍まで増加したが、1カ月から7ヵ月後までは逆に低値となった。グルコース液投与から2時間後の血糖値は高脂肪食摂取により有意に増加した。1カ月後にはこの値はコントロールレベルに戻ったが、8ヵ月から10ヵ月後までの期間は耐糖能がコントロール群よりも改善された。高脂肪食摂取直後と10カ月後に前脛骨筋をサンプリングし、2型糖尿病に関連する遺伝子発現を知らべた。その結果、PDK4やUCP3遺伝子発現が高脂肪食摂取により増加し、10ヵ月後も高発現を維持したままであることが分かった。GLUT4遺伝子発現は、高脂肪食摂取により低下したが、10ヵ月後にはコントロールレベルまで戻った。PDK4やUCP3遺伝子座にはアセチル化ヒストンやH3K4me1修飾が多く認められることも分かった。以上の結果から、高脂肪食摂取により発現誘導される遺伝子発現が残存することで、加齢に伴う耐糖能低下を抑制したと示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度に計画していた実験は概ね実施できた。まだ最終的なデータは得られていないが、当該年度はH2B-GFPマウスを用いた再生筋の機能評価実験も計画されており、十分な予備実験ができた。筋再生中におけるサテライト細胞の過増殖が、損傷後に再生した筋線維が肥大しにくい原因であると仮説を立てている。それを検証するために薬剤投与実験を行っている。薬剤の効果も仮説どおり得られており、現在本実験を実施しているため、研究全体としては総じて順調に進んでいると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
再生筋機能に関する研究は以下のように進める。①薬剤投与によりサテライト細胞の過増殖を抑制した場合の影響を調べる。また、筋再生中に顕著に増加するヒストン修飾(2018年度に特定済み)とサテライト細胞増殖または再生筋線維サイズとの関係、筋系細胞の融合因子であるmyogenin遺伝子座のエピゲノム変化を調べる。②上記の実験において筋再生中に出現するサテライト細胞をGFP強度によって分画し、培養条件下において自己複製能・筋分化能を測定する。③増殖頻度に依存してサテライト細胞で増加するヒストン修飾を阻害薬を用いて抑制し、再生筋線維の肥大機能との関係を調べる。以上の一連の実験から「筋損傷歴」がどのような原因で将来の筋肥大機能を低下させるのか明らかにできる。 2019年度は運動歴を有するマウスを用いた実験も行う。本研究では運動による骨格筋のエピゲノム変化について2016年度から2017年度まで検討を行った。他の実験モデルと比較するためマウスを使った実験が必要であることと、トレッドミルを用いた運動ではミトコンドリア代謝能が大きく亢進するほどの運動量を与えることができなかったためである。そのため2019年度はランニングホイールを使った自発走運動によるエピゲノム変化を追究する。
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