2016 Fiscal Year Annual Research Report
植物におけるプレニル化ポリフェノール代謝の総合理解
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16H03282
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
矢崎 一史 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (00191099)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水谷 公彦 京都大学, 農学研究科, 助教 (40314281)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生合成 / プレニル化 / ポリフェノール / 膜結合型酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
プレニル化されたポリフェノール化合物は、生理活性物質として主に薬学、農学領域などで天然物有機化学的な研究が盛んに行われ、1,000種近くが同定されている。多くのプレニル化フェノールが薬用植物の生理活性本体として特定されてきた。注目すべきは、プレニル基の存在がこれら生理活性において大きな役割を果たしているという点である。 この反応を触媒するプレニル基転移酵素(以下PTと略記)遺伝子を、筆者らが2008年に最初に報告して以来、次々と植物二次代謝系のPTがクローニングされ、本領域は急速に発展してきた。一方で、植物のPTがなぜ非常に高い基質特異性、生産物特異性を示すか、その酵素特性を担うドメインがどこか、さらにはどのアミノ酸が触媒機能をどのように担っているのか依然ブラックボックスのままである。本研究では、芳香族基質PTのアミノ酸配列から特異的基質や生産物を予測可能にする分子情報基盤を確立することを目指している。そのために、基質特異性や生産物特異性等、酵素化学的な性質の異なる複数のPT遺伝子のリソースを多数揃え、その中からアミノ酸相同生の高い組み合わせを選び、キメラ酵素を作成してこれら特異性を決定するドメインの特定を目指す。またデータを解析しつつ部位特異的突然変異導入の可能性を検討する。 サブ分子レベルでの触媒機能を理解するためには、蛋白質の結晶構造解析が主流となっているが、本酵素ファミリーは9回膜貫通型の蛋白質で、通常の手法では結晶化は不可能である。そこで、酵母をホストとしたGap Repair Cloning を利用し、収集した多くのPT遺伝子を独自の発現スクリーニングにかけることで、結晶化に向く組換え蛋白の生産を目指す。 さらに、プレニルアクセプタ基質ををプラスチドに正しく輸送供給するメカニズムを輸送研究から解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、なるべく異なった酵素化学的性質を持ったPT遺伝子を数多く同定し、そうしたPT遺伝子のリソースを充実させることで、アミノ酸配列の近似した、しかし異なった基質・生産物特異性を示すPT同士のキメラを作成することが重要である。 本年度は、これまで全く未解明であった、単純フェニルプロパノイドを基質とするPT遺伝子を、キク科のカワラヨモギのRNA-Seq の中から見いだすことができた。これは偶然の成果ではあったが、PTの触媒認識機構の分子解剖を目指す本研究としては、このユニークな性質を有する酵素の生化学的解析を行うことに十分なメリットがあると判断した。そこで、キメラ酵素の作成に優先して、植物で初めてとなる単純フェニルプロパノイド基質のPTの解析を行った。その結果、本酵素は単一蛋白質で2つのジメチルアリル基を芳香環に導入できる、極めてユニークなジプレニル基転移酵素であることが判明した。現在本酵素の関する実験データで論文の執筆を行っている所である。 植物のPT遺伝子としては、これまでに知られている40種余りのPT分子の中に、本酵素のような性質を持つものは一例も見いだされていない。それだけに本酵素の性質解明と論文化に注力することは研究進展に取って明確なメリットがあると考え、キメラ酵素の作成は平成29年度にシフトすることとなった。研究計画に照らしては遅れていると言わざるを得ないが、それに代わる新規な知見とリソースを得ることができ、本酵素ファミリーの理解を深めることには大きく貢献できたと考えるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目となったH29年度は、4月当初から様々な実験技術に習熟した技術補佐員を本研究費で雇用することとし、遅れていたキメラ酵素の作成を強力に推進する体制を取ることとした。4月時点で既に本技術補佐員には候補遺伝子を指定し、キメラの作成に取りかかってもらっている。 平行して、これまでに酵素活性を証明できているPT遺伝子のコレクションから、まずは出芽酵母 Saccharomyces cerevisiae を使った Gap Repair Cloning による発現ベクターの網羅的な作成を行う予定である。このコンストラクトでは、PTのC-末端にGPFが融合させられるようになっており、リコンビナント蛋白質の酵素活性だけでなく、蛋白質としての均一性をゲル濾過クロマトで評価できるデザインとなっている。それにより、結晶化に適したクローンを選び出す実験を行う計画としている。その進捗を見ながら、Pichia pastoris をホストとした Gap Repair Cloning が必要かどうかを判断して、研究を進めて行く計画である。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Molecular evolution of parsnip membrane-bound prenyltransferases for linear and/or angular furanocoumarin biosynthesis2016
Author(s)
Munakata, R., Olry, A., Karamat, F., Courdavault, V., Sugiyama, A., Date, Y., Krieger, C., Silie, P., Foureau, E., Papon, N., Grosjean, J., Yazaki, K., Bourgaud, F., Hehn, A.
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Journal Title
New Phytol.
Volume: 211
Pages: 332-344
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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