2016 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質の天然ポリカチオン修飾による細胞内直接送達法の基盤構築
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16H03284
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
濱野 吉十 福井県立大学, 生物資源学部, 教授 (50372834)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 膜透過性 / ポリカチオン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、タンパク質・酵素のような高分子物質を直接細胞内に送達させる革新的新技術として、タンパク質・酵素の天然ポリカチオン修飾による生体膜透過性改善を目指している。本技術を確立できれば、抗体医薬などのバイオ医薬品の新しい送達法を提供でき、また、タンパク質・酵素の機能について詳細な時間軸で解析することが可能になる。具体的には、官能基化ポリαあるいはポリβリジンエステルを用いたクリックケミストリーによるタンパク質・酵素のポリカチオン修飾技術の基盤を確立する(研究項目A)。さらに、ポリカチオン修飾されたタンパク質・酵素の細胞膜透過性を評価するとともに、その機能発現を評価する(研究項目B)。また、ポリαリジンやポリβリジン以外の天然ポリカチオン化合物を微生物から探索し、ポリカチオン修飾ツールの拡充を図る(研究項目C)。 平成28年度は、クリック官能基化ポリαリジンとして、ε-PL-PEG4-アジドを用い、蛍光タンパク質(Azami green)のポリカチオン修飾法を確立した(研究項目A)。さらに、ポリカチオン修飾したタンパク質・酵素の細胞膜透過性および機能発現評価に必須である動物細胞培養の実験系を立ち上げた。現在、ヒトガン細胞(HeLa細胞)にて、ポリカチオン修飾した蛍光タンパク質(Azami green)の細胞膜透過性について検討中である(研究項目B)。海洋および土壌由来の微生物から新規ポリカチオン化合物の探索を行ったところ、土壌由来の放線菌において新規ペプチド鎖長からなるε-PLの生産を確認した(研究項目C)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【研究項目A:官能基化ポリαおよびポリβリジンエステルによるタンパク質・酵素の修飾】ポリαリジンであるε-PLの生産放線菌の培養時にクリック官能基アルコールを添加するだけで官能基化ポリαリジンエステルを著量入手することができる。しかし、そのエステル構造が比較的不安定であることが判明した。そこで、種々検討したところ、PEG4をリンカーとした場合、化学的に安定な官能基化ポリαリジンエステル(ε-PL-PEG4-アジド)を創製できることを見出した。さらに、ε-PL-PEG4-アジドを用い、ポリカチオン修飾のモデルタンパク質として蛍光タンパク質(Azami green)を用いポリカチオン修飾法を確立した。 【研究項目B:ポリカチオン修飾タンパク質・酵素の細胞膜透過性および機能発現評価】ポリカチオン修飾したタンパク質・酵素の細胞膜透過性および機能発現評価に必須である動物細胞の培養実験系を立ち上げた。現在、HeLa細胞を用いて、ポリカチオン修飾した蛍光タンパク質(Azami green)の細胞膜透過性について検証中であるが、細胞内に取り込まれたAzami greenの蛍光強度を指標とした定量分析法について最適化しているところである。 【研究項目C:微生物由来新規ポリカチオン化合物の探索】タンパク質・酵素のポリカチオン修飾には、当研究室で既に利用できる「ポリαリジン」や「ポリβリジン」を先ずは使用するが、それ以外の天然ポリカチオン化合物を微生物から探索し、ポリカチオン修飾ツールの拡充を図る計画である。そこで、海洋および土壌由来の微生物から新規ポリカチオン化合物の探索を行ったところ、土壌由来の放線菌において新規ペプチド鎖長を有するε-PLの生産を確認した。 以上、研究項目全体としては、当初の計画通りに進展しているが、研究項目Cについては、より効率的な手法の開発が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
【研究項目A:官能基化ポリαおよびポリβリジンエステルによるタンパク質・酵素の修飾】クリック官能基化ポリαリジンであるε-PL-PEG4-アジドについては、その製造法を確立できている。しかし、クリック官能基化ポリβリジンについては検討段階にあるため、H29年度夏頃までにはその製造法を確立する。また現時点は、ε-PL-PEG4-アジドを用い、ポリカチオン修飾のモデルタンパク質として蛍光タンパク質(Azami green)を用いている。そのポリカチオン修飾法は、タンパク質表面に存在するリジン残基のアミノ基を利用した修飾法であり、複数カ所のポリカチオン修飾が導入される。そこで、1カ所のポリカチオン修飾法としてHaloタグを利用した手法について検討を開始する。また、そのHaloタグに必要な基質分子を有機合成する。 【研究項目B:ポリカチオン修飾タンパク質・酵素の細胞膜透過性および機能発現評価】現在、HeLa細胞を用いて、ポリカチオン修飾した蛍光タンパク質(Azami green)の細胞膜透過性について検証中であるが、より実践的な応用利用に向けた検討を始める。動物細胞に直接導入したい候補タンパク質・酵素は多数考えられるが、MALDI質量分析による動物組織のイメージング解析への応用利用を目指し、動物組織切片とプロテアーゼを実験モデルとして検証を開始する。 【研究項目C:微生物由来新規ポリカチオン化合物の探索】引き続き、海洋および土壌由来の微生物から新規ポリカチオン化合物の探索を行い、ε-PL以外のポリカチオン化合物生産菌を同定する。また、より効率的な微生物探索法として、アニオン色素を用いた新手法の開発を開始する。さらに、連携研究者である山中一也 准教授(関西大学)と共同開発中であるin vivoクローニングと異種発現を基盤とした新手法による新規天然ポリカチオン化合物の取得を開始する。
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Remarks |
現在、知的財産権の取得に向けて準備中であり、学会発表、論文発表は行っていない。
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