2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16H03298
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
安部 健太郎 京都大学, 医学研究科, 講師 (70462653)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 遺伝子発現制御 / 神経活動 / 脳イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、研究代表者によって開発された、生体内の細胞において内在転写因子の活性を高精度に定量測定する手法、および脳内の転写因子のダイナミックな活性変化をライブイメージングする技術を用いて、培養神経細胞および生体における神経活動依存的な多数の転写因子の活性を明らかにし、比較解析、活性操作することにより、それら活性変化と行動や病態への関わりを明らかにすることを目的とする。初年度においては生体内の転写因子活性を解析する足掛かりとして、培養細胞系を用いて、開発した実験系の確認を行うとともに、生体内と培養細胞系の違いを生み出す機構の解析を目指した。 本年度は、転写因子活性を可視化することが可能な転写医因子活性レポーターウイルス(Abe et al., PNAS 2015)を改変し、複数の転写因子に関するレポーターウイルスを作成し、蛍光観察可能な蛍光強度をしめすベクターを作成し、生体内での解析に使用可能な高力価ウイルスを精製した。これらのウイルスをマウス海馬神経細胞および大脳皮質神経細胞の初代培養系に感染させ、その機能や蛍光強度を確認するとともに、培養細胞系における細胞種による各種転写因子活性の違い、または、それぞれの細胞種において神経活動依存的な活性変化を示す転写因子の解析を行った。次に、それらのウイルスを生体マウス脳に感染させ、生体内においても刺激依存的な転写因子活性の変動を計測できることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、転写因子の活性依存的にレポーター遺伝子の蛍光強度を変化させ、その活性を可視化することを可能にするレンチウイルスベクターを順次作成した。また、ウイルス精製プロトコールの至適化を行い、効率的かつより安価に高力価ウイルスを作成する独自プロトコールを確立した。 次に作成した、ウイルスベクターを用い、マウス海馬神経細胞の初代培養系を用いて、培養神経細胞における複数の内在転写因子の活性の定量計測を行った。高カリウムバッファーによる神経活動誘発処理後と無刺激群との内在転写因子活性の違いを解析し、処理群において、既知の神経活動依存的な転写因子CREB, EGR1, MEF2, SRFなどの活性上昇が認められた。また、上記の転写因子の他にも、有意な活性上昇や活性の低下を示す転写因子を多数同定した。また、海馬神経細胞および大脳皮質神経細胞の初代培養系にそれらを感染させ、無刺激状態の細胞における内在の転写因子活性を測定した。その結果、52種類中14種の転写因子に関して、有意な活性の違いが認められた。これら結果は、本解析系が細胞の由来による内在の転写因子活性の違いや活動に応じた活性の違いを高感度に検出できることを示す。 次に、生体脳内の転写因子活性を明らかにする目的で、マウス個体に作成した転写因子レポーターウイルスを感染させ、刺激提示後の転写因子活性の変動を解析した。培養細胞で使用したものを基に生体内細胞におけるレポーター定量法の至適化を行い、生体内の細胞においても転写因子活性を定量的に解析する手法を確立した。また、神経活動を増強した刺激後において生体内においてもCREB, MEF2, SRFなどの既知の神経活動依存的な活性を示す転写因子の活性の上昇を1細胞レベルで検出することができ、本システムが生体内細胞においても有効であることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、計画通りに進捗している。次年度は、複数の転写因子レポーターウイルスをマウス脳の特定の部位(大脳皮質、海馬、線条体など)に感染させ、ホームケージ飼育平静時群に対する感覚入力刺激群の生体内の神経細胞の転写因子活性の変化を明らかにすることで、生体内において生理的刺激後に特徴的な活性変化を示す転写因子を明らかにする。また、前年度に引き続き、培養細胞刺激時と生体内感覚情報入力時における転写因子活性変化を比較解析し、生体内において特徴的な転写因子活性の変化を示す転写因子を明らかにし、その違いを生み出すメカニズムを明らかにする。 次に、生体脳内細胞の1細胞レベルでの転写因子活性測定を行い、脳内で転写因子活性化のおこる細胞を同定する。具体的には、転写因子レポーターウイルスを脳に感染させたマウスについて、上記の感覚入力刺激後にマウス固定脳切片を作成し、レポーター遺伝子の発現を染色法と顕微鏡観察により単一細胞レベルにおいて解析する。その細胞の性質や細胞が含まれる機能神経回路を明らかにし、その特異的な神経機能制御を試みる。また、自由行動中の動物におけるレポーター遺伝子の蛍光脳内イメージングにより行動と転写因子活性のイメージングを行うセットアップを確立する。
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