2017 Fiscal Year Annual Research Report
投射経路選択的細胞活性制御法と計算論的手法を用いた意思決定の神経回路機構の解明
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16H03303
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
溝口 博之 名古屋大学, 環境医学研究所, 講師 (70402568)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 意思決定 / DREADD / 島皮質 / 神経回路 / 精神疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
精神疾患患者は、ある行動場面において適切な意思決定ができず(自己制御能力の異常)、衝動的な行動選択を示すことがある。我々は精神疾患への新たな治療戦略の発見を目的に、ヒトの意思決定を評価するIowaギャンブル試験を参考に、小動物用ギャンブル試験を独自に開発し、島皮質、線条体、側坐核が意思決定異常に関与することを報告した。本研究では、確固たる評価に基づき、新規投射経路選択的遺伝子発現制御法と計算論的手法を用いて、薬理遺伝学的に責任脳領域(島皮質を中心)を操作し、①意思決定における島皮質GABA神経、グルタミン酸神経系の役割②意思決定における大脳基底核直接路、間接路の役割③意思決定における島皮質―線条体経路の役割④脳内計算機構における各種神経細胞の役割を明らかにする。平成29年度は、VGAT-Venusラットを用いたギャンブル試験の追試を行い、例数を追加した。再現性が確認でき、島皮質のGABA神経の活動抑制はリスク志向な行動選択を引き起こすことが分かった。また、この時の行動を計算論的手法によりパラメーター推定を行ったところ、リスク志向を示したラットにおいて、大報酬に対する期待値が大きくなっていることが分かった。また、逆行性AAV-Cre(Ser2Ret)を用いて、島皮質にAAV-Flex-DREADDを、線条体にAAV-Cre(Ser2Ret)を感染させ、島皮質から線条体へ投射する島皮質神経細胞だけに遺伝子を発現させることで、島皮質―線条体回路を特異的に操作した時の行動選択について検討した。このラットを用いてギャンブル試験を行ったところ、島皮質―線条体回路の活性化はリスク志向な行動選択を引き起こした。この事から、おそらく島皮質から線条体へと投射するGlu神経の異常な過活動は行動選択に影響することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、逆行性AAV-Cre(Ser2Ret)など、さらに神経特異的な操作が可能となり、意思決定に関わる島皮質の役割が次第に分かってきた。このように、行動制御手法が発展したことで、今後は様々な遺伝子改変ラットを用いて領域間ネットワークを遺伝子操作し、リスク志向な意思決定に関わる細胞や脳領域を同定することが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
VGAT-Venusラット実験では、電気生理学的手法を用いて、実際に島皮質GAVA神経が薬理遺伝学的手法により操作されているか検討する。また、島皮質―線条体回路実験では、リスク志向な行動選択を示したラットにおいて、島皮質Glu神経が活性化しているかどうか、免疫組織学的手法により検討する。また、DRD2-Creラット、オレキシン-Creラットを用いて、これら神経を光遺伝学や薬理遺伝学的手法により特異的に操作し、ギャンブル試験を行う。
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