2016 Fiscal Year Annual Research Report
7テスラMRIによる興奮及び抑制性脳ネットワークダイナミクスの計測技術開発
Project/Area Number |
16H03305
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
福永 雅喜 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 准教授 (40330047)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅田 雅宏 明治国際医療大学, 医学教育研究センター, 教授 (60223608)
下川 哲也 国立研究開発法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳情報通信融合研究室, 主任研究員 (30335385)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 7テスラMRI / MRS / fMRI / 安静時脳ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、7テスラ MR 装置の応用により、従来装置では感度・精度的に困難であった脳に内在する興奮性・抑制性神経伝達物質の非侵襲的定量計測を導入し、動的な脳ネットワーク構造を検出する基盤技術の開発から、生理的基盤の根拠に基づく脳回路モデルの構築を目的とする。 このために、興奮性神経伝達物質であるグルタミン・グルタミン酸および抑制性神経伝達物質であるγアミノ酪酸 (GABA) の定量的計測に耐えうる磁気共鳴スペクトル計測・解析法の開発、および高い空間分解能と時間分解能を有する脳ネットワーク解析を実現する機能的・構造的磁気共鳴画像の計測・解析技術の開発を目指す。 平成28年度は、7T MR 装置での神経アミノ酸検出のための MR スペクトロスコピーに、STEAM (Stimulated Echo Acquisition Mode) 法を導入し、ファントムおよびヒトボランティアによる計測にて各物質の検出を確認した。また、機能的磁気共鳴画像の時空間分解能上昇を目的に、マルチバンドシーケンスの導入と最適化を行い、全脳レベルで 1.2 ミリメーターの空間分解能を持ち、実用的な感度を有する EPI 画像の取得が可能であった。一方、拡散強調画像の空間分解能上昇には、readout 分割型 EPI を導入し、平面分解能 1.5 ミリメーターを確保しつつ、歪み、信号欠損が従来より軽減された画像の取得が可能となった。機能的磁気共鳴画像、拡散強調画像は、ヒトボランティア計測による検証の結果、画質の観点から、ヒト計測への応用が可能であると示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初期検討として、従来型の臨床用装置による MR スペクトロスコピーにて、ガンマアミノ酪酸 (GABA) などの神経アミノ酸計測に応用が進む MEGA-PRESS 法を 7T MRI に導入し、ファントム計測を実施した。その結果、本法の要素技術である editing MRS に用いられる励起パルスの帯域が、ヒトの実計測環境下では最適化が困難であったため、STEAM 法の応用を実施した。ファントム実験では、STEAM 法により、各種神経アミノ酸の検出が可能であった。ヒトボランティア計測では、磁場不均一に由来する緩和時間短縮が信号の質的低下の要因となったため、グラディエントエコー法の応用ではなくスピンエコー法を基本とし、エコー時間が短縮された感度の高い計測の必要性が示唆された。また、スペクトロスコピックイメージング (SI) 法の初期検討の結果、観測領域の一部の領域において観測アミノ酸、代謝物質間の mis-registration 改善が示唆された。 また、機能的磁気共鳴画像収集へのマルチバンドシーケンスの導入と最適化を行い、全脳レベルで 1.2 ミリメーターの空間分解能を持つ画像収集が実用可能となった。本法は、領域の選択を最適化することで、時間分解能、空間分解能のさらなる改善の余地が示唆された。拡散強調画像の空間分解能上昇に導入した readout 分割型 EPI では、1.5 ミリメーターの平面分解能を確保しつつ、歪み、信号欠損が従来より軽減された画像の取得が可能となった。 以上、これらの成果は、当初より想定していたものであり、これらをもとに、H29年度の研究計画の設定が可能であることから、研究の進捗は、概ね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、グルタミン酸およびGABAの定量的計測に耐えうる磁気共鳴スペクトル計測・解析法の開発として、7テスラ MR 装置において short TE STEAM シーケンスの開発および最適化を実施すると共にヒト計測への応用を進める。また、新たに semi-LASER 法を導入し、ケミカルシフトによる位置ズレに対する対策と、背景磁場均一度に対する耐性を改善する。また、これらの計測パルスシーケンスにて収集した各神経アミノ酸 MR スペクトルの定量的計測に応用しうる、神経アミノ酸、代謝物質 のモデルパラメーターをシュミレーションにより生成し、実計測における評価をファントムを用いて実施する。一方、高い空間分解能、時間分解能を有する機能的・構造的磁気共鳴画像の計測・解析技術の開発として、ネットワーク解析を前提とするマルチバンドシーケンスによる fMRI の最適化を実施するとともに、confounding factor としての生理的信号変動 (呼吸運動、心拍動、血液ガス飽和などの変動) が、これらのパラメータに与える影響を評価し、その抑制法を検討する。また、分割型拡散強調 EPI の最適化では、完全な抑制が困難な呼吸や拍動などに由来する動きに対する評価を実施し、生理的運動の観点から最適化を進める。本年度は、4年の研究期間の2年目にあり、解析技術の開発より、解析に使用する計測信号の高精度化に重点を置き、研究を実施することを計画している。
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