2018 Fiscal Year Annual Research Report
インドネシアにおける日系工業団地進出と地域社会変容に関する研究
Project/Area Number |
16H03319
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
内藤 耕 東海大学, 文化社会学部, 教授 (30269633)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
倉沢 愛子 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 名誉教授 (00203274)
伊藤 眞 首都大学東京, 人文科学研究科, 客員教授 (60183175)
大井 慈郎 岩手保健医療大学, 看護学部, 講師 (10757959)
新美 達也 長崎外国語大学, 外国語学部, 准教授 (80773192)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | インドネシア / 工業団地 / 地域社会 / 社会変容 / 共生社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に継続して、いまだに急速な開発が進行しつつあるインドネシア西ジャワ州カラワン県農村を重点的に調査した。工業団地の進出によって生じた さまざまな問題のなかでも、所得格差、関連産業立地、消費社会化などに焦点をおいて主に質的調査を行った。 具体的には第一に、住民調査および出稼ぎ(派遣を含む)労働者調査のデータの整理と追加的な聞き取り調査を行った。農村の旧住民と出稼ぎ労働者そして住宅団地の新住民の比較を行い、多価値混住状況を明らかにすることを試みた。雇用形態の違いはもちろんのこと、生活戦略の差異が明確になった。なかでも、本年度は、調査地区に居住する工場労働者たちに対して、移動、就職・転職状況と雇用形態に関する集中的インタビュー調査を行った。本調査対象者の多くは、中部ジャワ州の出身者である。調査地域とは距離的にも離れているが、現在はリクルート会社や学校などの就職支援を通して、就労していることが判明した。多数のアパート群が、地縁のない彼ら工場労働者の移動を支える一助となっていることが明らかになった。 第二に、地域における土地所有/使用の歴史を追い、工業団地用地買収や周辺の開発にいたる過程を探った。なかでも住宅団地開発の歴史を追い、当初はジャカルタのベッドタウンとして開発された地域が、工業団地従業員の住宅需要に応えるようになっていく過程を明らかにした。また、ここ1,2年の間にあらたに進む住宅団地や工場労働者用のアパート建設などの開発状況を追った。 第三に、商業施設や沿道商業従事者への調査を進めた。大資本の商業施設と自営の小商人たちの活動とに階層化された地域の商業空間の実情を把握することができた。 以上のほか、比較のための調査として、ジャカルタ、スラバヤおよびベトナムの工業団地における雇用状況などを調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
18年度の研究実施計画のうち、第一に掲げていた旧住民と新住民、出稼ぎの工場労働者らによって成る多価値混住状況については、おおむね明らかにすることができた。第二の研究項目のうち工場労働者のリクルーティングや労務管理についてもある程度把握できた。土地所有の歴史や商業施設、小商人の活動の調査も概ね整理できた。 その一方で、地域の教育状況の調査および農民運動の調査がかならずしも十分ではなかった。背景としては、昨年度に引き続き調査許可に関わる手続きに翻弄されたことが大きい。とくに19年4月の総選挙および大統領選挙を控えて、外国人の地域での調査活動に対する警戒が強まることが予想されたため、前年度よりさらに慎重さを求められた。 また、農民運動の指導者をはじめとして、キーパーソンとなるインフォーマントとは良好な関係を築いているも、政党地域支部の幹部である彼らは選挙が近づくにつれ活動が多忙となり連絡が途絶えるなどしたことは予定外であった。このほかにも関係機関の組織内問題の余波を受け、関係者との日程調整がうまくいかないケースなどが立て続いた。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に、19年度は補足調査を実施する傍ら、これまでの研究成果のとりまとめに注力していく。遅れ気味の調査項目もあるが、昨年度、もっとも影響が懸念された選挙については現職大統領の続投が決まり、調査協力者らも落ち着くことが予想されている。工場労働者の雇用にあたり重視される教育水準に関わる調査や農民運動の調査など、十分立て直すことができると考える。 また、成果をベトナムやタイなど、東南アジアの他地域との比較に向けて整理し、インドネシアにとどまらない研究の展望を得たい。 なお、本研究の成果については研究書の刊行の形で示すことを計画しているが、本年度中の脱稿、来年度前半での出版を目指したい。研究書では、特定のインフォーマントのライフヒストリーを通した地域社会変容の様子も紹介していく予定である。本年度は、そのための聞き取りをさらに進めていく。
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