2017 Fiscal Year Annual Research Report
Double Responsibilities of Care in East Asia: Investigating the Multi-dimensional and Intergenerational Nature of Care
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16H03326
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
相馬 直子 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (70452050)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ダブルケア / 地域ケアシステム / 国際比較 / 社会政策 / ジェンダー / 社会福祉 |
Outline of Annual Research Achievements |
第一に、調査結果を国際学会で発信し、ダブルケアの国際比較研究を発展させるための重要なインプットを得ることができた。具体的には、国際的なケア政策研究者が集まった、”Transforming Care Conference:INNOVATION AND SUSTAINABILITY”(伊)と、ヨーロッパ社会政策学会の”50th Anniversary Conference of the Social Policy Association Social Inequalities: Research, Theory, and Policy”(英)である。特に、前者では、サンドウィッチ世代の国際比較研究をしてきた北欧の研究者や、家族ケアの実態分析をしてきたイタリアの研究者から大変有益なコメントを得て、その後の論文や発表にも活かされている。後者は、ヨーロッパの文脈でのケアの複合化に関する貴重なコメントを得た。 第二に、学術雑誌(医療と社会、都市計画)への論文掲載とともに、日本大百科全書といったデジタルソースで調査研究の発信を行った。日本大百科全書でダブルケアという概念が掲載されるようになった。本研究で山下順子氏と開発した、狭義・広義のダブルケア概念が社会的に幅広く認知され、その実態がより明らかにされるようになっている。 第三に、ダブルケア関連のシンポジウムや研究会を通じて、調査結果を幅広く社会へ発信し、当事者や支援者のネットワーキングを行った。本研究プロジェクトでは、深刻な財政難・少子高齢化に対応した、多主体連携の「自治型・包摂型の地域ケアシステム」を提示することを目指しており、シンポジウムや研究会を通じても大変貴重なインプットを得る機会となった。 第四に、ダブルケアと仕事の両立に関する追加調査を、横浜市の地域ケアプラザや地域子育て支援拠点の協力を得て2018年3月から実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、晩産化・超少子化・高齢化が同時進行する東アジア社会における「介護と育児のダブルケア責任」の構造把握と、少子高齢化と財政難に対応した「自治型・包摂型の地域ケアシステム」構想への課題を検討するものであるが、二か年目の2017年度は予定どおり順調に進展している。前科研(団塊ジュニア世代のダブルケア責任の実態把握と制度的課題を抽出)の成果をふまえ、本科研では(1)団塊世代のダブルケア(自分の親(義理親)、祖父母の介護と、自分の子育て・孫育て(孫支援))の実態把握をジェンダー視点から行い、(2)前科研の成果と合わせて、世代間のダブルケア責任の連鎖の構造と支援課題を、東アジアの比較視点で解明するものであるが、日韓比較の検討を具体的に進めている。さらに、(3)子育て・介護の縦割り行政を超える、地域ケアシステムの変容をもたらす取組みと変革主体の形成のあり方を分析し、多主体が連携した「自治型・包摂型の地域ケアシステム」を理論的・実証的に検討するという課題については、各シンポジウムや研修の実施において、地方自治体、市民団体、他分野の研究者からも多様なインプットを得ることができ、順調に研究計画が進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
第一の課題である、中高年女性(団塊世代)の介護・育児のダブルケア分担の実態把握や、ダブルケアの理論的問題については、共同研究者の宋多永教授、山下順子上級講師とともに、2018年5月に韓国社会政策学会でダブルケアに関する共同セッションを企画。本研究プロジェクトの実証分析とともに、理論的な論点についても日韓比較の視点からインプットを得て、投稿論文をまとめる予定である。また、共同研究者が第15回東アジア社会政策ネットワーク国際会議(ブリストル大学)でダブルケア調査結果の報告をする予定である。 第二に、昨年度の3月から実施した、ダブルケアと仕事の両立に関する調査結果をまとめ、調査報告会を開催する。また、これまで実施してきたダブルケア実態調査の結果と比較を行い、投稿論文へと仕上げていく予定である。 第三に、5月に第4回全体会合を行い、ダブルケアに関する英語での出版計画や特集号の企画を協議し、出版社にプロポーザルを提出する。下半期は具体的に執筆を進めていくことで、本プロジェクトの体系的な研究成果を国際的に発信していく準備を具体的に進めていく。
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Research Products
(12 results)