2016 Fiscal Year Annual Research Report
熊本県山鹿市の歌舞伎(式)劇場・八千代座に関する総合的史料研究
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16H03366
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山崎 浩隆 熊本大学, 教育学部, 准教授 (20555768)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 みゆき 尚絅大学短期大学部, その他部局等, 講師 (00738552)
奥中 康人 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 教授 (10448722)
山田 高誌 熊本大学, 教育学部, 准教授 (10580665)
水野 裕史 熊本大学, 教育学部, 講師 (50617024)
塚原 康子 東京藝術大学, 音楽学部, 教授 (60202181)
宮本 圭造 法政大学, 能楽研究所, 教授 (70360253)
國枝 春惠 熊本大学, 教育学部, 教授 (80284719)
春田 直紀 熊本大学, 教育学部, 教授 (80295112)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 音楽学 / 音楽教育 / 音楽史 / 芸能史 / 社会連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず研究開始にあたり、八千代座保存を行政の立場で行った木村理朗氏による講演(6月10日)を企画し、それを踏まえ第1回キックオフシンポジウム(9月22日)を開催、、熊本大学名誉教授、安田宗生氏による明治・大正期における熊本の劇場および公演についての講演,ならびに熊本側の史料紹介、そしてその他の地域からの視点による史料活用について討議を行った。このイベントにあわせ、参加メンバー全員により八千代座文書史料の現地調査(9月23日)を行い、その後春田、山崎を中心に複数回の史料複写を行った。 第2回シンポジウム「“地方”における国民形成と芸能~劇場、学校、地域共同体~」(H29年3月5日)においては、国際日本文化研究センター細川周平氏の基調講演とともに、全国、および国際的な視点から地域共同体の中での劇場、学校のありかた、および八千代座とそれを支えた山鹿地域の特殊性を明らかにした。 ほか、12月5日には、山崎、山田、國枝、春田、水野の準備、そしてイタリア文化会館大阪(イタリア外務省)の後援のもと、八千代座においてボローニャの喜劇団フラテルナル・コンパニアによるコメディア・デッラルテ《ドン・ジョヴァンニ》公演、および演劇レクチャー(熊本大学)を行った。この公演は山鹿市教育委員会と連携して地域の中、高校生50名、山鹿市長、熊本県知事等行政側を招待するなど、八千代座の持つ歴史的意義と研究の役割を、地域住民、学校教育、行政、そして国際レベルにある演劇界のそれぞれに対して伝える研究アウトリーチであったと位置づけることができる。 その他、個人研究として山崎、森は熊本県下の学校における音楽活動と劇場活用の事例の調査を進め、山田は大正期から昭和にかけての映画史料について着目し、早稲田大学との共同調査を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時点での本研究初年度活動の柱として、まず劇場に関連する史料の確定とそのベータベース化を予定していた。そして次年度には復元コンサートの準備として八千代座で行われていた教育用音楽等の調査および活動写真に関する調査を行うことを計画していた。 本年度、実際に調査、研究を開始すると、まず史料確定についてはデータベース化までいらなかったが,概ね順調に進んでおり,来年度は分類整理、そして部分的に翻刻を進め、最終年度における公刊に向け準備を進める予定である。 また八千代座のある山鹿市の史料だけでなく熊本市の史料の中にも本研究テーマに不可欠の史料を新たに確認することとなり、それをもとに八千代座が学校とともに地域の文化拠点としての機能を果たしていたことを,本年度開催した2回のシンポジウムによって明らかにすることができ、予定以上の成果であった。 さらに,映画史料についても八千代座に関するものの多くが早稲田大学に未整理ではあるが残されていることが確認できた。それらの整理とともに,再来年度には復元上映会等の開催を目指している。また次年度にはイタリア・ローマにおいて本研究テーマをイタリアの劇場研究者に問うシンポジウムを計画し、国際的劇場研究の潮流に本研究を組み込んでいく手がかりを本年土中につくることができたことも、予想以上の展開となっていると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度は,春田を中心に八千代座に関する史料,および八千代座の設計・建築に携わった木村亀太郎の私信等,現存する史料の複写,分類・整理と翻刻の準備を学生および大学院生を研究協力者として依頼し,進める予定である。また,あわせて高齢者への聞き取り調査も行い,八千代座が大衆にとってどのような存在であったのかを具体的に明らかにしていく予定である。 その他、水野を中心として大道具,小道具をデジタルデータ化しそれを分類・整理し,道具のカタログ化を進める。そして学校と八千代座との関係については,引き続き山﨑,森で調査を進め,映画史料の調査についても引き続き山田が進めていく。 なお,映画史料については当時上映されていたと考えられる映像データ、および楽譜が一部存在することが確認できたため,再来年度は早稲田大学演劇博物館、東京大学、国立近代美術館付属フィルム・アーカイブ、イタリア国立映画研究所などとの共同企画として、音楽、映像の復元コンサート、シンポジウムを開催することも新たな計画として進める予定である。 また29年度は9月に研究分担者を交えてシンポジウムを開催し,それまでの調査・研究の成果を多面的に明らかにするとともに、さらに30年3月に、日本国外務省管轄、在ローマ日本文化会館において八千代座、および日本の近代劇場にかかわるシンポジウムを開催し、本研究の意義と成果をイタリアの劇場研究者と共有し、本研究の国際的展開をも模索する。
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Remarks |
山﨑浩隆―山田高誌「山鹿・八千代座~来歴と着目点」、公演プログラム(“フラテルナル・コンパニア”による《アンドレイーニ台本、ドン・ジョヴァンニ~蘇った招客(1651)》熊本・八千代座公演、2017/12/7), 9
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Research Products
(2 results)