2017 Fiscal Year Annual Research Report
熊本県山鹿市の歌舞伎(式)劇場・八千代座に関する総合的史料研究
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16H03366
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山崎 浩隆 熊本大学, 教育学部, 准教授 (20555768)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 みゆき 尚絅大学短期大学部, その他部局等, 講師 (00738552)
奥中 康人 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 教授 (10448722)
山田 高誌 熊本大学, 教育学部, 准教授 (10580665)
水野 裕史 熊本大学, 教育学部, 講師 (50617024)
塚原 康子 東京藝術大学, 音楽学部, 教授 (60202181)
宮本 圭造 法政大学, 能楽研究所, 教授 (70360253)
國枝 春惠 熊本大学, 教育学部, 教授 (80284719)
春田 直紀 熊本大学, 教育学部, 教授 (80295112)
佐藤 慶治 精華女子短期大学, 比較社会文化研究院, 特別研究者 (10811565)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 音楽史 / 音楽学 / 音楽教育史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず八千代座に残る文書史料および設計・建築を行った木村亀太郎に関わる文書史料調査を行った。その中で劇場内に残る奉納額に書かれた内容および演目にかかわる文書の内容についての調査・整理を中心に進めた。それと併せて、地域の高齢者から八千代座に関わる当時の思い出等の聞き取り調査、さらに八千代座建設時からある施設等の調査も行った。現在、それらを整理し地域における八千代座の役割や地域住民にとっての機能を明らかにしているところである。史料調査からは八千代座で行われていた演目種類および公演の比率など大正期・昭和初期における公演の様子がおおよそ明らかになった。特に、八千代座の劇場内にある奉納額や残されたいた帳簿等から演目の内容やどのような人々が公演に関わったのか、また劇場公演に関わる具体的な職種が明らかになり、大正および昭和初期の八千代座での公演の様子が明らかになってきている。 教育史の分野では昭和40年代に各学校で編纂された百年史等の史料を比較検討することにより劇場が学校文化の普及にかかわる機能を有していたことも明らかになった。 本年3月には国際交流基金ローマ日本文化会館にて国際シンポジウムを開催し、音楽学、音楽教育、日本史、行政、演劇史、音楽史の立場からこれまでに明らかにしたことを発表するとともにラウンドテーブルではイタリアの劇場との比較を通して日本の劇場の役割を検討した。シンポジウムでは、山鹿民謡をもとに作曲したピアノ曲の世界初演も行い、地方における劇場を中心として文化の新たな発信の形を提示したところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、熊本県山鹿市にある歌舞伎劇場八千代座に関する総合的研究であり、具体的には史料データベース作成と専門研究(音楽学、音楽教育史、演劇学、芸能史、美術史、日本史)、アウトリーチとしてのカタログ作成、シンポジウム、演奏会、展覧会の実施という柱から構成される。これを通してこの劇場が行っていた多彩な演目を同定し、それを踏まえ、独自の“日本化”が広がった大正期以降、この劇場が地域に果たした役割を、洋楽受容、教育史、更に作品の「復元」等を通して三次元的に解明することを目的としている。 これまでに日本史、芸能史の立場から劇場に残る史料の整理,および昭和初期に八千代座での公演を実際に鑑賞してきた高齢者から聞き取りを行い,演目の同定を中心に八千代座での公演にどのような人々が関わってきたのかを明らかにした。音楽教育史の立場からは,学校と劇場の関係についての調査研究を進め学会発表および論文発表を行った。また,音楽学の立場からは国際シンポジウムにおいてイタリアの劇場との比較から日本の劇場の役割についても明らかになってきている。 さらに,活動写真については早稲田大学演劇博物館のコレクションでの調査も進み、八千代座での公演の実態に迫るとともに復元公演を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる本年度は、まずこれまで調査を行ってきた文書史料、大道具・小道具等にかかわる収蔵品カタログを完成させるとともに、史料の一部翻刻とともに、それらを用いて各分担研究者が論文を寄せる形で論文集を作成し、研究期間終了後の研究書出版を目指すものとする。 また、9月末、あるいは11月に早稲田大学演劇博物館との共同事業として、八千代座で戦前の無声映画上演会、およびシンポジウムを実施する。これは、数年前に早稲田大学演劇博物館が無声映画上演の際に用いられていた当時の伴奏楽譜を大量に購入したことをきっかけに、映画上演のあり方を再現するものとなり、すでに2017秋には同演劇博物館主催の企画として行われたものであるが、本企画は、熊本出身の徳富蘆花の映画《不如帰》を取り上げることにより、八千代座での映画上演の意義を探るものとなる。またシンポジウムには、国立映画アーカイブズより主任研究員の岡田氏を、九州の近世芸能史の専門家である御茶ノ水女子大の神田氏を招き、関西から九州にかけての映画、演劇、芝居の流通に関する視座を提供頂き、文化拠点としての劇場の役割をさらに多角的に検討する。 なお、本イベントは、山鹿市、山鹿市教育委員会の全面的協力のもと地元の住民、生徒を対象とする研究アウトリーチとして位置づけるものであるが、2018年山鹿市で全国大会が行われる全国小京都都市連盟全国大会とも日程を合わせるものとして、劇場と大学を活用した地方活性化の取り組みの事例として、旧市街の保存を試みている全国の自治体担当者に提案を行うものとなる。
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Remarks |
國枝春惠 作曲・演奏 「よへほ節によるパッサカリア(ピアノ独奏)」2018年3月13日 国際交流基金ローマ日本文化会館にて行った国際シンポジウム「近代日本の地方劇場が果たした役割」にて世界初演 宮本圭造 「能『松風』からオペラ『松風』へ」、新国立劇場公演プログラム『松風』、2018年2月、公益社団法人新国立劇場運営財団、26-29、査読無
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Research Products
(8 results)