2016 Fiscal Year Annual Research Report
唱導文献に基づく法会の綜合的研究―寺院聖教調査の統合と復元的研究への展開―
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16H03385
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
近本 謙介 名古屋大学, 文学研究科, 准教授 (90278870)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 泰郎 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (60193009)
上島 享 京都大学, 文学研究科, 教授 (60285244)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 唱導 / 寺院聖教 / 法会 / 儀礼 / 復元的研究 / 東アジア / 金剛寺 / 真福寺 |
Outline of Annual Research Achievements |
〇本研究は、近年飛躍的に進みつつある寺院聖教調査の成果を踏まえ、特に唱導文献に着目して、法会の綜合的理解へと研究を深めることを構想するものである。これを推進するため、調査・研究の継続と成果報告を推進した。以下、基盤調査と各研究・分析プロジェクトに沿って概要を示す。 [基盤調査]〔金剛寺調査・研究〕においては、前年度に完成済みの目録に依拠して聖教分析を進め、日本学術振興会より出版助成を得て、「天野山金剛寺善本叢刊 第1期」2冊を刊行した。〔真福寺調査・研究〕においては、真福寺大須文庫聖教典籍悉皆調査の礎となる「黒板目録」のデータ入力作業を推進し、分析の基礎的作業を終了した。〔神奈川県立金沢文庫調査・研究〕においては、分析対象となる聖教・唱導文献におけるアーカイヴ化の視点による調査を推進し、次年度以降の成果報告および連携展示のための準備を整えた。 [寺院聖教調査の統合的研究]関連唱導文献の注釈・分析作業を推進した。研究代表者の在外研究に伴って、これを海外においても研究グループによって進めた。成果報告の場を翌年度に確保しつつ、その準備を進めている。 [復元的研究・東アジア宗教文献比較対照研究]復元的研究については、連携研究者が学会発表による成果報告を行った。また、後述の海外展開フィールドにおいても、院政期の諸宗派における法会の実態を解明する事例について、学会・フォーラムによる成果報告を複数行った。東アジア宗教文献に関する研究については、先行する研究期間に実施したシンポジウム・フォーラムの出版による成果報告の準備を整えた。いずれも、次年度に刊行予定である。 [海外展開・連携フィールド]ハーバード大学において、ハーバード大学他の研究者および国内の研究者との共同研究による国際ワークショップを開催した。また、次年度に開催されるEAJS(欧州日本研究協会)の大会におけるフォーラムの準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
〇成果報告については、当初の計画以上の出版実績とそのための準備を整えることができた。天野山金剛寺善本叢刊に関しては、第1期の刊行に続いて、次年度に刊行を継続するめどがたった。東アジア宗教文献比較対照研究の領域においても、先行研究期間中から推進してきた国際シンポジウム等の成果を刊行する計画が複数実現し、それぞれ校正・入稿段階に入っている。学会等における発表の分野においても、複数の研究メンバーが参加したハーバード大学における国際ワークショップをはじめ、欧米の研究集会での成果発表を進めることができた。研究成果報告の場については、次年度以降にも継続・分散するかたちで、ほぼその内容を整えるに至っている。 〇基盤調査においては、真福寺大須文庫の今後の調査・分析に必須となる目録の入力作業が、当初の計画以上に進展した。この結果、次年度からの効率的な分析作業が可能となり、合わせて平成30年度に予定している連携展示企画による成果報告への道筋についても大きな前進となった。真福寺と金剛寺との統合的調査については、両寺院における調査・研究・成果報告が順調に進んでいることで、今後に向けての相乗的効果が期待される状況である。 〇研究期間開始後に、研究代表者の所属先変更と在外研究が惹起したが、この当初予期していなかった状況に関しても、研究分担者・連携研究者との協力的関係によって大きな問題は生じなかった。むしろ、海外における展開フィールドにおいては、研究代表者の在外研究先であるハーバード大学との連携関係の強化および成果報告に結実する結果となった。国内寺院・文庫における調査機会が当初の計画通りに確保できなかったが、これについては、次年度に補って実施する計画を策定済みである。また、復元的研究の成果の学会等への発信は十分に推進することができたが、研究組織内での問題の共有機会は、次年度に確保する必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
〇本研究のめざす唱導文献に基づく法会の綜合的研究においては、寺院聖教の統合的研究と復元的研究を大きな柱としている。前者においては、真福寺大須文庫の目録整備と天野山金剛寺聖教の研究成果報告が順調に進んでおり、これを研究推進の中核と位置づける。この研究を推進するためには、東大寺をはじめとする関連諸寺院の調査および唱導文献を中心とする聖教の分析が必須である。そのための調査機会と共同研究による分析の場を、次年度以降に十分確保する方針である。後者については、初年度の研究成果報告を踏まえ、法会との関連を示す唱導文献の豊富に残される後白河院政期を中核に据え、これを推進することとする。ただし、調査・研究を進める過程で、特に美術史関係の研究者との共同研究によって、鳥羽院政期の分析についての重要性が認識されてきており、これについても併行して推進する計画である。 〇上記の研究を推進するいまひとつの中核的プロジェクトとして、東アジア宗教文献比較対照研究を位置づけている。本研究プロジェクトについては、研究成果の出版物をすでにふたつ準備済みなので、まずはこれらの刊行を実現する。その上で、敦煌文献と日本の唱導文献の相対化のための研究方法等を策定する。これを推進するためには、敦煌文献に比してアーカイヴス化の遅れている日本の唱導文献のそれについても進めていく必要がある。その方向性を探るワークショップを計画中である。 〇国際展開フィールドとしていくつかのプロジェクトが進行中である。ウィーンアカデミーとの共催による国際アーカイヴス学ワークショップは、本研究の今後の推進方策を明確化する目的を有しており、このテーマを写本学の立場から進める目的でハンブルク大学との共催による国際シンポジウムを準備中である。これらを踏まえた展示を伴う研究成果報告を国内で行い、さらなる展開の方向性を探る共同研究をコロンビア大学と立案中である。
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Remarks |
名古屋大学人文学研究科附属人類文化遺産テクスト学研究センター https://www.lit.nagoya-u.ac.jp/cht/
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Research Products
(27 results)