2016 Fiscal Year Annual Research Report
定家本源氏物語と古今集・後撰集との相関性に関する文献学的研究
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16H03387
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
加藤 洋介 大阪大学, 文学研究科, 教授 (00214411)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保木 秀夫 鶴見大学, 文学部, 准教授 (50311163)
田中 登 関西大学, 文学部, 教授 (60123668)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 源氏物語 / 古今集 / 後撰集 / 古筆切 / 定家本 |
Outline of Annual Research Achievements |
校本化のための源氏物語・古今集・後撰集の校合作業と、そのデータをもとにそれぞれの定家本の形成と展開に関する相関性を検証する作業が、本研究の二つの大きな柱となる。 作業が先行している源氏物語については、作業未着手の18帖を対象に穂久邇文庫蔵本・伏見天皇本・書陵部蔵正徹本・書陵部蔵三条西家本・大正大学蔵本といった『源氏物語大成』未収伝本を対象に校異データへの増補を行うことを目標にしており、本年度は新規には末摘花・薄雲の2巻の作業に留まったが、過去に公開したデータのチェック作業を網羅的に実施し、新たに更新したデータを既設のホームページ(http://www.let.osaka-u.ac.jp/~ykato/)にアップロードし、研究者の利用に供する手立てを整えた。 一次作業が終了している古今集は、当初3年をかけて入力データのチェック作業を行う予定であったが、これを前倒しして実施し、一次作業の終了した伝本についてチェック作業をほぼ終えた段階にある、今後はその結果をデータに反映させる作業を行い、その上で各種古筆切の校合作業を本格的に始動させる予定である。 後撰集に関しては、底本とする冷泉家時雨亭文庫所蔵の藤原定家自筆天福二年本の入力データチェック作業を終え、伝坊門局筆本については校合作業を終えた。今後は小松茂美『後撰和歌集 校本と研究 校本編』や杉谷寿郎『後撰和歌集諸本の研究』所収の各種伝本に関する校合作業を開始する。 上記のデータを蓄積することを継続するとともに、定家本古今集・後撰集の本文変化を作品横断的に検討し、合わせて定家本源氏物語との相関性を測るための基盤を整備し、検証作業を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
源氏物語と古今集について、多大な時間と労力を要する入力データのチェック作業をほぼ網羅的に実施できたことは、今後の調査を展開していく基礎が整備できたことを意味しており、順調に進展していると評価できる。また後撰集についても、校合作業を開始する始発段階には到達できたと思われる。いずれも来年度以降に本格的な調査を展開させていくことが可能になったと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
源氏物語については作業未着手の巻が14帖(少女・初音・胡蝶・蛍・常夏・篝火・野分・梅枝・藤裏葉・紅梅・椎本・宿木・蜻蛉・夢浮橋)あり、引き続き校合作業を実施する。 古今集については、古筆切に関する本格的調査を開始する。所在や画像・歌番号の確認をした上で、校合作業を進める。また校本化に際して、古筆切についてどのような校異掲載が望ましいかを合わせて検討する。 後撰集については校合作業が可能な段階に到ったので、定家本・非定家本それぞれについての校合作業を開始し、源氏物語や古今集とともに定家本の本文変化を作品横断的に検証する。
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