2017 Fiscal Year Annual Research Report
現代英語圏文学におけるモダニズムの遺産継承に関する包括的研究
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16H03393
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田尻 芳樹 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20251746)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秦 邦生 青山学院大学, 文学部, 准教授 (00459306)
佐藤 元状 慶應義塾大学, 法学部(日吉), 教授 (50433735)
吉田 恭子 立命館大学, 文学部, 教授 (90338244)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 英米文学 / 英語圏文学 / 遺産継承 / モダニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
田尻は5月に、モダニズムから現代文学まで幅広く著作があるJean-Michel Rabate教授(ペンシルヴァニア大学)を招へいし、ベケットおよびクッツェーに関する講演をしてもらった。秦は、現代英語圏小説におけるモダニズムの継承を考察する理論的枠組みとして、近年の英語文学研究におけるモダニズム研究の隆盛に関する調査を行い、また、カズオ・イシグロ研究の準備段階として、平成30年3月にはイギリスにおける1980年代の新進作家たちについて文芸雑誌やアンソロジーなどの資料調査を行った。佐藤は、「遅れてきたモダニスト」たるグリーンの文学史的貢献を一冊の研究書にまとめ、『グレアム・グリーン ある映画的人生』(慶應義塾大学出版会、平成30年3月)として出版し、また同時にもう一つのプロジェクトであるカズオ・イシグロと映画のアプリエーションをめぐる論考を二つ出版した。吉田は、The Program Eraで知られるMark McGurl教授(スタンフォード大学)を7月に招へいし慶応大学、立命館大学での講演会を組織した。また、アイオワ大学国際創作プログラム主催の日本文学と翻訳をめぐる諸行事に参加、詩的パフォーマンスとしての翻訳、および実験的翻訳をめぐる一連の理論的討論を行い、その成果を『三田文学』130号に寄稿した。10月の米文学会関西支部会では、21世紀の長編小説4作を19世紀から戦後のキャノン4作と比較しながら読むパネルに参加した。 7月のMcGurl教授来日時にはメンバー全員が交流した。またメンバー全員で、前年読書会で扱ったRebecca Walkowitz著Born Translatedの翻訳、そして平成30年5月の日本英文学会全国大会でのシンポジウム参加を計画し、それに向けて具体的な議論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
29年度は28年度と違い、公開の読書会は開催しなかったが、ジャン=ミシェル・ラバテ教授、マーク・マクガール教授の来日はメタモダニズムと関連テーマの理解を深める上で大きな成果を上げたし、レベッカ・ウォルコウィッツ教授の著書Born Translatedの翻訳や日本英文学会のシンポジウム参加に向けても動き出した。また各メンバーがそれぞれの研究のため内外での活動を進展させたことは言うまでもない。したがっておおむね順調との評価を与えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
田尻はイアン・マキューアン、カズオ・イシグロ、J・M・クッツェーら現代英語圏作家について引き続きモダニズムとの関連を意識しながら研究する。秦は新たにアジアのモダニズム研究者との連携を模索する。佐藤は特にイシグロと映画の関係に焦点を合わせ、イシグロの文学史的な立ち位置をどのように見定めるのかを引き続き検証していく。吉田は今後も創作・翻訳理論を実験的・言語横断的文学に活かす手法でモダニズム美学の継承を検討していく。 またメンバー全員でレベッカ・ウォルコウィッツ教授の著書Born Translatedの翻訳を完成させる。さらに平成30年5月の日本英文学会全国大会でメンバー全員が出演するシンポジウムを成功させる。
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Research Products
(7 results)