2017 Fiscal Year Annual Research Report
Switzerland during the Nazi era and the spiritual national defence: politics of culture as to "adaptation or resistance"
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16H03400
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
葉柳 和則 長崎大学, 多文化社会学部, 教授 (70332856)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市川 明 大阪大学, 文学研究科, 教授 (00151465)
増本 浩子 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (10199713)
中村 靖子 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (70262483)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 精神的国土防衛 / チューリヒ劇場 / 演劇 / 文化史 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナチスの全体主義的プロパガンダに直面した1930-40年代のスイスにおいて、国民統合を維持し、強化するために推進された愛国的文化運動「精神的国土防衛(Geistige Landesverteidigung)」の文化史的意義を明らかにするために、以下のように、研究会開催、学会発表、海外調査、論文・書籍執筆を行った。 3か月に一度の割合で、「第2期スイス科研研究会」を開催した。研究会はメンバー以外にも公開し、大学教員、ポスドク研究員、大学院生、演劇関係者などが参加した。メンバーは個別に、学会等での口頭発表を行い、そこでの議論を研究会にフィードバックした。 論文は7篇が学術的ジャーナルや演劇専門誌に掲載された(掲載決定を含む)。論文は「精神的国土防衛」の社会-文化史的背景を探るものと、チューリヒ劇場を中心にした第二次世界大戦期のスイスの文化と精神的国土防衛の関係を探るものに別れる。 調査はスイスのチューリヒ、ベルン、ドイツのベルリンにおいて、主として未公刊のアーカイブ資料を収集した。資料は研究会において共同討議に付し、論文執筆や口頭発表の基礎資料としての価値を確認した。 研究成果を踏まえて翻訳されたマックス・フリッシュの『アンドラ』が大阪で上演され、さらに、研究分担者ではないが、研究会に参加しているメンバーが同じくフリッシュの『ビーダーマンと放火犯たち』を、研究会での議論を踏まえて翻訳し、東京で舞台に掛けている。上演に至る過程でプロジェクトメンバーが、劇団に講師として招かれるなど、アウトリーチ活動を活発に行った。 年度の後半は、平成30年度に日本独文学会で開催するシンポジウム----これは本プロジェクトの最も重要なイベントである----の準備を入念に行った。3月に行った研究会において、シンポジウムのタイトルと各メンバーの分担を決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究会を予定通り定期的に開催するとともに、メンバー外の研究者や演劇関係者にも公開し、さらに劇団へのアウトリーチ活動を行うなど、プロジェクトの土台となる研究会活動が順調に行われている。プロジェクトの最終的な目標は論集の出版であるが、そのための一里塚である日本独文学会でのシンポジウムの準備も順調に進んでおり、学会への申請書もおおよそ作成済みである。 シンポジウムまでは、研究成果に関して、メンバーが個別に学会発表を行い、論文を執筆することにしているが、これも順調に行われた。書物として公開された研究はないが、研究会の成果をもとに『アンドラ』が翻訳され、プロの劇団によって上演された。 スイス・ドイツにおける資料調査も順調に行われた。それぞれの本務校での仕事との関連で、調査期間を十分にとることができない中、平成30年度に開催するシンポジウム、さらには出版に必要な資料を収集することができた。 以上の理由から、当初の予定以上に進捗しているとまでは言えないが、おおむね順調に進展していると自己評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の主たる課題は、(1)9月に名古屋大学で開催される日本独文学会において、本プロジェクトが中心となったシンポジウムを開催すること、(2)論集出版に向けた準備作業に取りかかること、(3)平成29年度までの調査を補完するための調査を、スイス・ドイツにおいて実施することである。(1)と(2)に向けて研究会を開催し、研究会において海外調査での役割分担と収集計画を確定する。 (1)シンポジウムの準備を意識した研究会を2回、そのための準備会を2回開催し、万全の体制でシンポジウムに臨めるようにする。シンポジウムのタイトルは「時事劇と寓意劇のあいだ---Rieser時代からWaelterlin時代のチューリヒ劇場」。報告はプロジェクトメンバー4名とメンバー外の研究者1名によって行われる。 (2)上の準備と並行して、論集出版に向けて、出版方針の決定、章立ての決定、出版社の選定作業を行う。科学研究費補助金の出版助成を申請するか否かによって、章立ての方針が変わってくるため、慎重に議論を繰り返す。 (3)チューリヒのマックス・フリッシュ・アーカイブ、チューリヒ市アーカイブ、ベルンの国立図書館付設スイス文学アーカイブ、ベルリン大学図書館等と緊密に連絡を取り、限られた調査期間の中で効率的に資料収集できるように事前準備を入念に行う。
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Research Products
(10 results)