2018 Fiscal Year Annual Research Report
Real-time studies of multilingual Palau: Language change over 20 years
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16H03412
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松本 和子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (80350239)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 意味変化 / メタファー / メトニミー / 省略 / semantic change / metaphor / metonymy / ellipsis |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、20年前に研究代表者自身が行った言語調査を、再度、20年後に実施し、「見かけ上の時間」・「実時間」という二つの観点から、この間にパラオの言語状況がどのように変容したのかを解明することを目指している。4ヵ年計画の3年目の研究として、今年度も①アンケートを用いた多言語使用や言語意識に関する調査、②パラオの高齢層の談話データに基づいた日本語変種の調査、③パラオ語の借用語における意味変化に関する調査を行った。 ①多言語使用と言語意識に関する調査では、調査対象者を35歳以上へと拡大させ、アンケート調査を実施した。バランスの取れたサンプリングを目指し、幅広い職種(専門職、事務職、サービス業等)のパラオ人より回答を得た。現在はその集計・分析を進めている。その途中成果を、去る6月と3月に国際学会において口頭発表・基調講演で公表した。 ②パラオ日本語に関する研究では、パネル調査に向けて20年前に録音した同一話者から再度データの収集を試みたが、他界した話者が多いことから、日本統治時代を経験した世代で今回新たにデータを収録したケースもある。また、これまで未整理・未分析となっていた膨大な一次データの電子化や活字化、データ化を図ることができ、現在の研究の土台を補足・強化することができた。 ③借用語に関する研究では、世代間(20才、40代、60代、80代)における意味的変異と変化を考察するためのデータを補充することができた。その途中成果を、去る6月の国際学会で報告し有益なフィードバックを得た。 また、これまで行ってきたミクロネシア地域における現地調査の経験をまとめた論考「Encountering Micronesia through sociolinguistic fieldwork」が日本オセアニア学会の機関誌『People and Culture in Oceania』に収められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の予定・計画、すなわち中高年層を対象とした多言語使用・言語意識に関するアンケート調査および4世代を対象とした借用語の意味変化に関する調査の実施と分析をほぼ滞りなく遂行することができたと考える。さらに、きわめて重要であるものの、これまで未整理・未分析となっていた膨大な一次データの電子化や文字化、データ化を図ることができ、現在の研究の土台を補足・強化することができた意義は大きいと考える。その結果、過去100年間の多言使用・言語意識の変容に関する考察をまとめるなど、一定の成果が得られたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度の前半は、アンケートの回答の統計分析を進め、20年前と現在において言語維持や言語シフトを促す諸要因異に変化があるかどうかを観察する。また、新旧データを比較しながら、「見かけ上の時間分析」の有効性に関する議論を展開する。さらに、借用語の意味的変化に関するデータの分析を進め、編著書より刊行する予定である。来年度の後半は、再度、パラオにて現地調査を行い、パラオ日本語データの収集を続ける。帰国後は、集計作業、データの文字化やデータ化、定性・定量分析を行い、来年度は最終年度として、これまでの研究内容を補足・充実させるとともに、総括的かつ総合的な分析・研究を展開したい。
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