2017 Fiscal Year Annual Research Report
Mirativityにおける「焦点」と「評価」の役割:日英語からのアプローチ
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16H03428
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
島田 雅晴 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (30254890)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長野 明子 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (90407883)
三上 傑 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 講師 (60706795)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 日英比較 / 情報構造 / カートグラフィー / 方言 / 普遍文法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年間の研究をもとに、その成果を論文としてまとめることができた。1つは島田と長野の共著が、Journal of Historical LinguisticsのEvidentialityについての特集号に掲載された。この論文において、日本語のmirative形態素の出現や発達など史的変遷にも触れながら、mirative形態素3種類を特定している。もう1つは島田の単著で、これは3種類のmirative表現の中の1つ、形容詞タイプのものについて、別の分析の可能性を論じたものである。この論文は、中国でのカートグラフィー理論に関するワークショップで発表した内容の改訂・拡大版である。研究発表としては、5月にベネチアで開催された「Workshop on Pseudo Coordination and Multiple Agreement Constructions」という国際会議と翌3月にシュトゥットガルトで開催されたドイツ言語学会での島田と長野の共同研究などがある。 また、前年度に引き続いて、日本語のmirative形態素を九州方言の調査を通して研究した。前年度より福岡市シルバー人材センター実地調査の範囲を広げ、さらには、大牟田市シルバー人材センター、熊本県の八代市シルバー人材センターにも協力を依頼し、新発見を含む多くの貴重な資料収集をすることができた。特に、文末詞、「たい」、「ばい」、相の形態素、「とう」、「よう」について、研究が進んだ。 また、島田は所属する筑波大学大学院の英語学研究室の大学院生たちと日ごろから授業や研究会を通して、英語やゲルマン語、ロマンス語に関する焦点、mirativityについて情報交換を行っている。特に、今年度はつくばグローバルサイエンスウィークに際してワークショップやを開催し、その中での発表やプロシーディングス論文の編纂を通して、多くの貴重な情報を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果を論文として公刊できたことが大きな理由である。特に、これまで体系的に研究されたことがなかった日本語のmirative形態素のついて、その候補を特定することができたこと、日本語でのmitative表現の史的変遷を明示できたことが大きな成果として挙げられる。 また、前年度以上に充実した九州方言実地調査を行うことができ、新たな資料を収集し、研究を前進させることができた。 さらに、9月に参加したヨーロッパ言語学会でトルコ語の研究者の発表から関連するトルコ語のデータと分析を知ることができた。学会の後も情報交換を行っており、今後の研究の広がりが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、Jounal of Historical Linguisticsで特定した日本語のmirative形態素についてさらに考察を進め、理論の検証をする。また、九州方言の実地調査をさらに推進し、加えて、東北方言の実地調査も開始し、方言を参考にして日本語のmirative形態素をさらに探索する。 次に、英語のmirative形態素に関する研究を本格化させる。関連研究に従事している大学院生たちにも協力を依頼する。 また、mirative形態素の観点から、あらたにトルコ語と日本語の比較を行う研究にも着手する。 上記の活動を通して、統語理論の構築に貢献する。
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