2018 Fiscal Year Annual Research Report
複数言語背景の子どもの日本語支援を支えるネットワーキングに関する実践的研究
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16H03437
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
石井 恵理子 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (90212810)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 ひろみ 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (50334462)
池上 摩希子 早稲田大学, 国際学術院(日本語教育研究科), 教授 (80409721)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 子ども / 複数言語文化 / 言語支援 / ネットワーキング / 発展型支援体制 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに実施した複数言語背景の子どもの状況および支援に関する調査の分析を進め、順次、学会・研究会等で発表を行ない、フィードバックを得た。学齢期の子どもについては、十分な支援体制が得られないケースが非常に多いことが根本的な問題であり、教育支援体制整備がまず基本として進められなければならないことがほとんどの地域における課題として出てきている。支援体制がある程度できている地域について見ると、支援を行う人や場、機関等がそれぞれに固定的に関わる体制となっているところが多い。それぞれの分担の範囲で進められ、横のつながりが乏しい体制では問題が発生しやすく、解決の方策がとりにくいことも見えてきた。子どもを取り巻く多様な立場、専門性、関係性等の人や組織のつながりの有用性が認められた。また、当事者である親に対する支援が見られたところでは、家庭における子どもの支援がよりよく機能することも認められた。 本研究の研究の一環として立ち上げた「子どもの日本語教育研究会」も軌道に乗り、2018年度末までに、研究大会を4回、研究会を3回、ワークショップを3回開催し、この領域の研究者、実践者、当事者等の研究・実践の発表・共有の場として認知され、連携の模索も少しずつ進んでいる。連携を活用しこれまでの調査対象と異なる状況の対象や環境についてのデータ収集も逐次進めた。また、学校教員、日本語教師、地域の支援者、行政関係者等に対する研修や研究会等の講師をつとめるなど、実践現場への還元とともに子どもたちの支援に関わる人たちのネットワーク構築に資する活動を国内外において多数行った。これらにより、実践関する調査協力者も得やすくなってきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本科研のプロジェクトとして立ち上げた「子どもの日本語教育研究会」は、計画通り1年に3回の開催で実施してきている。ワークショップ、研究会、大会、という3種類の異なる方法や内容、主たる参加者層を想定したそれぞれの特徴を持持った、複数言語文化の子どもの教育に関する実践・研究の発表と共有の場として実施してきている。研究会に対する認知も広がり、開催地域の特性を勘案したテーマ立てによる企画をしてきた。例えば、甲府会場でのワークショップは学校教員、あるいは地域の支援者主たる参加者として想定し、地域ごとの支援体制の状況や、連携の工夫などをそれぞれの地域特性を踏まえて理解し、自分の現場との比較や応用などを考えるための事例の共有を意識した意見や情報の交換を進める機会となっていることが、会場での様子やアンケートから確認することができた。研究会が単なる成果発表に終わらず、極めて多様性の大きい各実践の環境を踏まえつつ、発表を発表者および参加者の対話的問題解決につなげていく1歩となりつつある。ネットワーキング、発展型支援体制という本研究のキーワードでもある重要項目ついての成果が少しずつ見えてきている。 調査研究について、データ分析を順次進め、得られた学術的知見については、学会・研究会での発表を重ね、フィードバックを得ている。また学校教員や地域の支援者、当事者である親を対象とした10数件の研修を本科研メンバーが講師として担当し、教育実践の領域への還元とそこからのフィードバックを得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの家庭を中心とした子どもと親を中心として行った調査について、必要に応じて補完調査を行いつつ、分析を進める。加えて、家庭をとりまく環境として、学校や地域等の支援制度や体制の整備状況の把握を行う。特に、子どもを支えている「親」がどのような支援の方向にとどまらず、支援する者に対する支援について着目して研究を進める。支援者の孤立は大きな問題であり、子どもをとりまく環境の全体を見渡し、支援する立場の者(あるいは組織)に対する支援を射程に入れて見て行く。全体が手探り状態である複数言語の子どもの支援について、十分な知見や知識を持ち得ていない支援者のエンパワーという観点から検討を行っていく。それにより、子どもの「ことば」や「学力」に集中した、一つの観点・ルートでの支援ではなく、子どもに関わる多様な立場の人や組織の緩やかで可変的な連携による支援の意義を考えていく。 個別の調査のほか、研究会での多くの研究・実践事例を収集し、また参加者によびかけて体制整備や連携を推進する要因を考えて行く。
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Research Products
(18 results)