2017 Fiscal Year Annual Research Report
構文部分木頻度の確率的情報に基づく第二言語習得理論構築のための基礎的研究
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16H03444
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
杉浦 正利 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (80216308)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 第二言語習得論 / 頻度効果 / 学習者コーパス / 視線計測 / 判別分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 学習者コーパスに関して (1-1) データ収集:初年度の試験的なデータ収集で確立したデータ収集手順に基づきデータ収集を行った。一クラス約40名を3クラス(約120名)対象にCriterionを使った英文エッセイライティングの授業を行った。今回はおよそ9割がデータ提供に同意してくれ、本年度は年間112名分(延べ約840ファイル)のデータ収集を行った。(1-2) データの整形とコーパスの構築:収集データを、昨年度確立した整形手順に基づきデータ整形処理を行い、これまでに整形処理したデータと統合し、およそ1300ファイルの縦断的学習者コーパスデータを収集できた。(1-3) コーパスの分析:Stanford ParserとDisco-DOPを連携して処理できるようにプログラムを開発した。そのプログラムを使い、昨年度収集分のデータに対して「部分木」の頻度分析を開始した。また、英語母語話者データについても収集済みの20名分のデータとの比較分析作業を開始した。母語話者・学習者間の頻度差が大きい部分木に見られた特徴として、母語話者は冠詞や前置詞を含む木を多く使用しており、学習者は人称代名詞や動詞+名詞句から成る動詞句を多く使用していることが観察された。英文エッセイの統語的及び語彙的特徴から母語話者と学習者との判別に寄与する特徴を決定木分析及び非線形判別分析を使って分析し、平均Tユニット長と語彙の多様性指標Dにより9割以上のエッセイを正しく判別できることがわかった。 (2) 視線計測実験に関して コーパスデータの分析に基づく先行研究の知見を参考に、取り上げる実験項目を決め、独自に実験文・絵・音声を作成して実験項目を作り、Visual World Paradigmによる視線計測実験を行った。実験の開始が予定より少し遅れたため、現在分析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
縦断的学習者コーパスのデータ収集は順調に進んでいる。本年度は昨年度以上にデータの提供に同意が得られた。研究成果はまだ論文にはなっていないが、国際学会でも研究発表を行っている。 視線計測実験はやや遅れ気味であるが、実験を開始することができた。データの分析をふまえて、実験の修正が必要になるかもしれないが、実験手順は確立できたので、引き続き実験を行っていく。 総合的に判断して、おおむね計画通りに進んでいるといえると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 学習者コーパス 引き続き、データ収集を行う。さらに2クラス(約80名)を対象にCriterionを使った英文エッセイライティングの授業を行いデータを追加収集する。今後さらに延べ約500ファイルのデータ収集を見込んでいる。これまでに収集したデータと合わせて縦断的学習者コーパスの完成を目指す。部分構文木の頻度分析は部分構文木のデータ量が莫大になるため、その効率的な分析手法について検討が必要である。 (2) 視線計測実験 これまでに行った視線計測実験の分析結果を検討し、先行研究のコーパス分析の結果と、本研究で収集したコーパスデータの分析の結果を照合しながら、分析・考察を進める。その結果、実験に何らかの修正が必要となった場合には、その修正をしたうえで、視線計測実験を行う。
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Research Products
(6 results)