2016 Fiscal Year Annual Research Report
航空管制の安全を脅かす母語話者の発音の乱れと対策の研究
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16H03454
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
新田 晴彦 専修大学, 商学部, 兼任講師 (80424323)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Walter K.Klinger 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (10275183)
岡崎 弘信 秋田県立大学, 総合科学教育研究センター, 教授 (80405084)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 航空英語 / 航空管制 / Eラーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
航空管制の現場において、英語の母語話者との通話を日本人管制官や操縦士が正確に聞き取るのは容易ではない。その一方で、母語話者が比較的ゆっくりと話すような通話ではリスニングにほとんど問題が生じない。これらのことから、我々は航空管制のリスニング問題を、日本人側に原因を求めず、母語話者側が高速に通話することにより発音に崩れが生じ、またその崩れの種類が多岐に渡るのであろうと、主因をむしろ母語話者側に求めている。この観点より研究を進めるために必要なものは、口語音データベースであるが、まずこれを整備し、それを用いて母語話者の発音の崩れや広がりを解析する、という手順を想定している。また最終的には解析結果に基づきリスニング訓練のシステムを設計作成する。 本年度はこのうち口語音のデータベースの整備に力を入れてきた。その結果、研究開始時に約100万語ほどであったデータベースは現在220万語となっている。 ・このデータベースを用いて基本語彙2000語を調査した。約500語ほどは崩れを探るに十分であったが、それ以外の語彙では現データベースではまだ力不足のようである。よって次年度も引き続きデータベースの整備を続けていく予定である。 ・英語の上級者の協力を仰ぎ、崩れのリスニング難易度の調査を行った。調査対象にしたのは頻出度順で200語ほどである。この難易度調査も引き続き次年度で行っていく。 リスニング訓練用のシステムはWEBを用いたものになるが、本年度はその土台となるEラーニングシステムのプラットフォームの制作を行った。次年度はこのプラットフォームに学習に必要な制御システムを実装していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べた口語音データベースを用いて基本語彙2000語を解析する予定であった。200万語ほどのデータベースがあれば解析には十分であると想定していたが、実際には力不足であることが分かった。本来であればデータベースをさらに大きくすることで対策とするべきであろうが、解析結果から判断すると、2000語すべてを解析できるデータベースは非常に巨大なものになることが想定された。そのようなデータベースの構築は時間的にも資金的にも現実的ではない。 我々はこれを基本語彙の調整を行うことで対処することとした。200万語のデータベースの中にさほど登場しない語彙まで解析対象とする必要はないとの判断である。どのような語彙を解析対象から外すかはこれから検討していくが、基本語彙を調整しても使用頻度の高い語彙はすべて網羅されており大きな問題とはならないであろう。このような意味で研究の進捗には影響を受けておらず順調と言える。語彙のみでなく熟語やフレーズの問題もあるので、今後継続してデータベースの整備は行っていく。 発音の崩れの頻出度や難易度の解析と同時に著作権フリーの音声作成を行えるためこの面でも遅れはなく予定通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究は次のように大きく4つに分類できる。いずれも互いに密接に結びついており(1)から(4)へと順に進めていく。 (1)口語発音のデータベース整備:口語音のデータベース整備は前年度にほぼ終了しているが、前述したように語彙や表現によってはデータベースに力不足を感じさせることがあるため、さらにサイズを大きくすることで不足部分が補えるようデータベースの整備をさらに進める。 (2)発音の崩れの頻出度や難易度のデータ整備:(1)のデータベースを用いて発音の崩れやその広がりを調査していく。頻出度、難易度などの解析も進め、リスニングの支障となる音の崩れのデータベースを整備する。 (3)著作権フリーの音声データの作成:(2)の音の崩れのデータベースから著作権フリーの音の制作を行う。これは次の(4)のリスニング訓練システムに用いるための音声作りである。 (4)リスニングシステム(Eラーニング)の制作:日本人のリスニングを悩ます崩れた口語音を用いての学習サイトを構築する。
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