2017 Fiscal Year Annual Research Report
An Interdisciplinary Study on AINUSHIKKI (Lacquerware)
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16H03472
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
浅倉 有子 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (70167881)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮腰 哲雄 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員 (00062018)
谷本 晃久 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (20306525)
本多 貴之 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (40409462)
佐々木 利和 北海道大学, アイヌ・先住民研究センター, 客員教授 (80132702)
松本 あづさ 藤女子大学, 文学部, 准教授 (90510107)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 漆器 / アイヌ / 場所請負人 / 開拓使 / サハリン |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、研究目的のうち「サハリンや千島を含めたアイヌの人々に、いつ、どこで生産された、どのような漆器が、いかなるルート・方法でもたらされたのかを解明」するという目的と、「中世末から近代までのアイヌが用いた漆器を対象に、漆器の生産地と技法等の特徴(木地、下地、塗り、加飾等)を明らかにする」という目的の、二つともに大きな成果が得られた年度であった。年度末には、例年通り北海道大学において研究成果の報告会を公開で実施した。各研究分担者の研究は、それぞれ目を見張るほど進展を見せている。例えば、分担者のMAは、開拓使文書から明治初年の郡ごとの漆器の移入状況の相違について論じた。また、浄法寺漆器については、新ひだか町所蔵のそれらについて、連携研究者のYTが形状や木地、模様の分類、計測を実施した。あわせて、研究分担者のMTが科学分析の結果による一定の傾向について明らかにした。同様に、分担者のHTは、昨年度実施した小樽での調査に基づく科学分析の結果を提示した。とりわけ分担者のTAによるアイヌが漆器を見る目線の先に、和人の役人がいるという漆器の「機能」を論じる報告が出色であった。和人が漆器を利用して、アイヌに従属を求めるという報告は、これまでの研究史を凌駕するものであった。 全体としては、初年度から実施しているロシアのサハリン州ユジノサハリンスク市に所在する郷土史博物館との研究交流を進めた。参加可能なメンバー6名(連携研究者を含む)が9月27日から2日間、同館を訪問し、前年度からの漆器調査を継続するとともに、同館所蔵の色丹島関係文書の撮影を行った。同文書は、これまで日本人研究者が撮影したことがない文書であり、貴重な機会となった。また、館員を前に小研究報告会を開催し、その様子が同地のネットニュース"SAKHALIN INFO"で報道されるなど、広く関心を集めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サハリンとの研究交流が順調に進み、また各分担者・連携研究者の研究も比較的順調に進捗しているため、上記のように判断した。特に浄法寺漆器についての分析が集積されていることが、大きな成果である。浄法寺漆器以外でも、連携研究者のYY氏による塗膜分析から大きな成果が出ている。特に、現在漆器の生産地ではない京都漆器の生産と流通の状況などが、分かりつつある。千家十職により生産された漆器の文様が、会津漆器に取り込まれるなど、漆器をめぐる生産と流通、情報伝達の状況が判明しつつあり、極めて興味深い状況を呈している。また、小樽市総合博物館所蔵の漆器にベトナム産の漆が用いられていることが判明するなど、アイヌが用いた漆器が、東南アジアからの漆の流通を示す興味深い事例が明らかになっており、今後もこの点についても分析を進めたいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、本科研の最終年度であるため、これまでの成果を、論文集として安価な方法で出版したいと考えている。また、12月に明治大学においてシンポジウムを開催し、成果を一般に還元したいと計画している。出版・シンポジウムともに、連携研究者を含めて実施したい。あわせて、シンポジウムには、サハリンの郷土史博物館の学芸員のK氏を招聘したい。それによって、先方との研究交流が一層進展すると期待している。 来年度の申請では、可能ならば、基盤研究(A)(一般)を申請できるよう、準備を進めたい。そのために、現在のメンバーではカバーしきれない分野をお願いできる研究者を考慮中である。
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Research Products
(27 results)