2017 Fiscal Year Annual Research Report
西洋近代の海洋世界と「海民」のグローバル循環―北大西洋海域から
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16H03502
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
田中 きく代 関西学院大学, 文学部, 教授 (80207084)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芝井 敬司 関西大学, 文学部, 教授 (00144311)
肥後本 芳男 同志社大学, グローバル地域文化学部, 教授 (00247793)
佐保 吉一 東海大学, 文学部, 教授 (00265109)
森永 貴子 立命館大学, 文学部, 教授 (00466434)
田和 正孝 関西学院大学, 文学部, 教授 (30217210)
坂本 優一郎 大阪経済大学, 経済学部, 准教授 (40335237)
竹中 興慈 東北大学, 国際文化研究科, 名誉教授 (50145942)
遠藤 泰生 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (50194048)
金澤 周作 京都大学, 文学研究科, 准教授 (70337757)
君塚 弘恭 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 准教授 (70755727)
阿河 雄二郎 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 名誉教授 (80030188)
中野 博文 北九州市立大学, 外国語学部, 教授 (10253030)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 海民 / グローバル循環 / 海洋史 / 海のリテラシー / 大西洋海域 / 太平洋海域 / 地中海海域 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、従来実施してきた北大西洋研究の成果を世界の他の諸海域にまで広げ、海の研究の世界史における重要性を提示しようとするものである。すなわち、海に生きる人々である海民の日常の諸活動からマンタリテのレベルまで立体化し、より普遍的な海民の存在を国際的に考察しようとするものである。そのために、本年度は、研究代表者・研究分担者による研究報告と海外調査、新刊書などの書評、他の研究会との合同研究、海外の研究者の招聘等を行った。 研究報告では、フランス領カナダにおける毛皮貿易について、20世紀への世紀転換期におけるアメリカ合衆国の中国政策があり、研究会としては、大西洋海域の研究を充実させるとともに、太平洋海域への接続を試みている。また、ハワイ研究者に海と宗教についても報告を受けた。これも、環太平洋世界への接続の一つである。 書評では、笠井俊和氏の『船乗りのつなぐ大西洋世界』(2017)を、研究分担者の坂本優一郎、君塚弘恭分担者がコメンテイターとして書評した。また、研究会の多くのメンバーが著述した田中きく代・阿河雄二郎・金澤周作編著『海のリテラシー―北大西洋海域の海民の世界史』の書評会を海事史の研究者たちを招いて実施した。これらの書評会によって、グローバル循環に関する共通理解が深まったと考えている。 他の研究会との関係では、中世史の山の研究会と合同研究会を開き、海のリテラシー概念の再検討を行い、どこまで西洋史学の他分野と架橋できるかを検討した。 外国人研究者の招聘では、映像の研究者に、帆船時代の海民のマンタリテが、20世紀初頭の映画にいかに描かれているかについて講演の機会を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の科研費での海外調査の件数が予定より少なかった。このことが反省であるが(来年度以降に達成する予定)、その他の点ではおおむね順調であった。研究代表者、研究分担者の個別の研究が進んだとともに、他の研究会との合同研究会を開催できたこと、様々な研究者を招聘することで、研究分担者、研究協力者の枠を超えて海の研究者のネットワークを広げうることができたからである。 それは、研究実績のところで述べた海洋研究者の研究報告や、書評のコメンテイターとの討論、山の研究会との合同研究会での論議を通してである。報告者や書評者以外にも多くの研究者が討論に参加されたが、そうした海洋研究に関心を持つ研究者の諸見解にも示唆を受けることが多かった。 また、外国人研究者の招聘によって得られたものも多い。20世紀初頭の映像に18世紀末から19世紀の海民がどのように描かれていたかという講演は、やや後の時代の人びとの記憶という限界もある。だが、海の世界、特に捕鯨と移民に関する映像は海の世界の時間の経緯が陸の世界のそれと異なり、より長期の持続を伴うもので、海民自体の時間も流動的で可変的であったことを示唆していて刺激的であった。 次年度に、研究代表者、研究分担者の研究成果の一部を、海洋研究を啓蒙書として出版し、最終的に論文集を出版する計画もある程度に煮詰まってきたことも、研究の進捗状況がおおむね順調である理由の一つとして評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、計画通り、年に数回、研究代表者、研究分担者、研究協力者による合同研究会を持つ。そこでは、個別発表が主となるが、班別の研究の成果も報告される。これが日常的な研究の推進計画であるが、海外調査が主たる研究計画でもあるので、昨年度達成されなかったものを含めて数人派遣する。 これ以外に、外国人研究者(フランス)の招聘と日本人研究者の招聘によるラウンド形式の国際研究会を開催する。当初は、国際シンポジウムを企画していたが、多くの海洋研究者をフロアに招き、ラウンド形式とはいえ、テーマも「フランス支配下のインドと海」ということで定まっており、実質的に国際シンポジウムと変わらないと言える。論者は外国人研究者も日本人研究者も、テーマに関する第一人者で、フランスとインドとの海洋における関係史の最新の話題を提示されると期待しているが、研究会としては、地中海、インド洋などの海域との接続を目指すという思惑もある。 さらに、進捗状況のところでも指摘したが、研究成果の発信も心掛けており、31年度に啓蒙書、32年度に専門書を刊行する準備を行う。
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Research Products
(16 results)