2016 Fiscal Year Annual Research Report
介護・看護労働への外国人労働者の参入と地域労働市場
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16H03521
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
神谷 浩夫 金沢大学, 人間科学系, 教授 (40192546)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮澤 仁 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (10312547)
高畑 幸 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (50382007)
由井 義通 広島大学, 教育学研究科, 教授 (80243525)
加茂 浩靖 日本福祉大学, 経済学部, 准教授 (90454412)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 外国人ケアワーカー / 高齢化 / 看護師 / 介護福祉士 / 人手不足 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究を開始するにあたって、もっとも重要な基礎データとなるEPA看護師・介護福祉士を受け入れている施設の所在地を都道府県別に分析した。データ分析作業は全員が担当したが、データ入力作業は高畑を中心に、その図化作業は宮澤を中心に行った。この分析結果は、当該科研においては途中段階の成果に過ぎないが、EPA看護師・介護福祉士の都道府県の分布図だけでもきわめて資料的価値が高いと考えられることから、EPA看護師・看護福祉士の分布図を分析した論文を学会誌の投稿する準備を進めることにした。学会誌への投稿原稿作成は、宮澤を中心に進めている。 本年度の後半には、由井は広島県など中国地方の県における看護師・介護福祉士の労働需給と外国人を受け入れている施設におけるヒアリング調査を行い、高畑は同様の調査を静岡県を中心とした東海地方について、加茂も高畑と同様に愛知県を中心とした東海地方について、宮澤は東京都を中心とした関東地方の都県を重点に調査を実施した。なお、神谷は中国で研究活動を行っていたこともあり、ベトナムからやって来るEPA看護師・介護福祉士候補者の送り出しメカニズムを中心に調査を実施した。また、2017年1月に長野県木島平村および長野県富士見町で開催したWSを通じて、EPA看護師・介護福祉士候補者をフィリピン、インドネシア、ベトナムから招聘する際に採用している政治的・経済的なメカニズムや来日後に受け入れ施設とEPA看護師・介護福祉士候補者との間で生じる軋轢についても情報を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、本調査の基本的な資料となるEPA看護師・介護福祉士候補者の受け入れ施設に関するデータが順調に入手でき、本科研の基礎を確立することができた。この基礎データを概観するだけでも、これまでの研究では指摘されていない様々なことが明らかとなった。具体的には、EPA看護師・介護福祉士候補者の受け入れが始まった当初はインドネシアからやって来る人たちが多かったが、近年ではインドネシアからやって来る候補者の人数は頭打ち状態にあり、逆にベトナムから来日する候補者が急激に増えていることが明らかとなった。 EPA看護師・介護福祉士候補者を受け入れている施設の地域的な分布傾向については、これまでのところ明瞭なパターンは見出していない。人手不足が深刻である大都市周辺でも一定数のEPA看護師・介護福祉士候補者を受け入れている一方、高齢化が進んでいる地方の県を観察した場合にも、多くの候補者を受け入れている県とごくわずかな候補者しか受け入れていない県なども存在し、そのばらつきが大きい。ばらつきの原因について本研究グループで検討を重ねているが、都道府県という行政単位に起因する問題ではなく、立地している病院や高齢者施設を運営する医療法人および社会福祉法人の持つ外国人労働力への施設に起因している可能性があり、この点に関しては来年度以降も継続して分析する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
EPA看護師・介護福祉士候補者は、毎年その数が増加しているため、継続的にデータを収集して分析を進める必要がある。さらに、昨年11月に国会で審議され法案が成立したことにより、今年からは技能実習生として介護福祉士の入国が始まる。EPA看護師・介護福祉士がインドネシア、フィリピン、ベトナムの3か国に限られていたのと比べると、送り出し国は15か国に拡大する予定であり、人数的にも大幅に拡大すると見込まれている。 その結果、看護・介護の現場で働く外国人労働者はEPA看護師・介護福祉士(候補者)と技能実習生の2種類が存在するようになり、外国人労働者の間にも格差が生じると予想される。 外国人労働者を受け入れている病院や特養などの当該施設が、外交人労働者の受け入れに際してこうした二極化にうまく対処できるのか。あるいは、たとえ施設がうまく対応できたとしても、彼ら/彼女らが日常生活を送る地域社会が、施設の待遇面における微妙な差異をきちんと理解した上で受け入れることができるか否か、これからの大きな課題になると予想される。 当初の研究計画では、社会統合を推進するために地方自治体や国際交流協会が実施している多文化共生施策についてヒアリング調査を実施する予定であった。地域における多文化共生の実現可能性について調査を実行する際には、こうした点についても十分に配慮する必要性が出てきた。こうした新しい動きに対して、施設や地域社会がうまく対応できるか否かについても、調査を進めていく予定である。
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Research Products
(1 results)