2016 Fiscal Year Annual Research Report
Doctrine of Indirect Discrimination and Methodology of Identifying Rights Violation within Social Exclusion
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16H03545
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
西原 博史 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (10218183)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅倉 むつ子 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授 (80128561)
遠藤 美奈 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (40319786)
植木 淳 名城大学, 法学部, 教授 (50364146)
白水 隆 帝京大学, 法学部, 講師 (70635036)
杉山 有沙 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 助教 (00705642)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 社会的排除 / 間接差別 / 障害差別 / 形式的平等 / 実質的平等 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、これまで十分に意識されていなかった権利剥奪のプロセスに憲法上保障された基本的人権の侵害を認定するための問題発見枠組を開発し、それに対応した権利保障システムの構築を目指す。その目的のために、多くの法システムで採用される間接差別禁止の体系的位置と射程の比較研究を行い、排除過程の中に差別的要素等を認定できる枠組を探求する。 2016年度においては、共同研究の基盤を作り、間接差別論に関わる研究素材の法体系的な位置づけを探るための作業として、論文集『平等権と社会的排除――人権と差別禁止法理の過去・現在・未来――』(浅倉むつ子・西原博史編、成文堂、2017年)を編み、そこに共同研究参加者が対象とする国(法体系)および対象事項(差別禁止事由)との関係で認められる重要な規範的手掛かりの確認作業を行った。すなわち、そこには、日本法(第1章、浅倉)、EU法(第3章、黒岩)、イギリス法(第6章、杉山)、アメリカ法(第5章、植木; 第7章、今井; 第8章、森口; 第9章、根田; 第11章、小池)、カナダ法(第4章、白水)、フィンランド法(第10章、遠藤)等における差別禁止法理の位置づけが整理され、性別、人種、障害、宗教・信条、社会環境等による差別に関わる論点が提示された(下記の業績リスト参照)。 これらの研究成果は、上記研究目的との関係において国内の法学研究において初めて体系的視点の下に整理されたものであり、非常に大きな学術的意義がある。これを踏まえて、2017年度以降の順調な研究遂行が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度は共同研究の初年度であり、共同研究者間において共通の理論的視点を共有し、かつ自らが専門としない比較対象国における間接差別を中心とした差別論の理論構造に向けた共通認識を形成することを目標にしてきた。 2017年2月に上梓した著作『平等権と社会的排除』により、その目標は有意義に達成されることとなった。その点において、一定程度、当初の予想を上回る速度で研究が進行している部分がある。ただ、ここで得られた共通認識が存在すると同時に、この比較法研究を通じて、当初の想定以上に各法体系における理論枠組に異質性を持つ要素が組み込まれていることが明らかになり、研究目的の達成が近づいたと手放しで評価できる状態でもない。 今後、この著作を手掛かりとし、共同研究者に共有された理論的視点の通用可能性に関わる吟味を深めるとともに、日本法に受容可能な規範的要素を識別し、法解釈実践において新しい成果を生み出すことに向けた営為を続けていくことになる。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度に完成した著作『平等権と社会的排除』で得られた知見を踏まえ、その認識を深めるとともに、精緻化していくことになる。 すなわち、本研究は、①潜在能力アプローチを通じた社会的排除過程における権利侵害の特定可能性に関する理論分析、②社会的排除の一態様に対する法的規制ルールとしての間接差別禁止法理の意義と内容に関する比較憲法的分析、③間接差別禁止法理を裁判上運用可能な立証手続ルールとして構築するための法規範構造の分析、 という3種の分析対象を設定された部分プロジェクトを総合する形で推進される共同研究であるところ、 2017年度以降においては、『平等権と社会的排除』に取りまとめられた比較対象国の理論動向に関する理解を深め、比較法的分析を行う際に共通に意識される分析視角の一層の精緻化を図るとともに、それを前提に、普遍的法理論に取り込み得る要素の識別基準に関する検討を進めていく。
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