2017 Fiscal Year Annual Research Report
ハーグ条約の「友好的な解決」-国際家事メディエーションをめぐる国際私法上の課題
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16H03550
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
長田 真里 大阪大学, 法学研究科, 教授 (10314436)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 俊一郎 神戸大学, 法学研究科, 教授 (30180326)
高杉 直 同志社大学, 法学部, 教授 (60243747)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ハーグ条約 / メディエーション / ADR |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は,平成28年度に引き続き,各研究者において,文献調査を中心として申請テーマにかかる研究を継続して行った。また,適宜,研究者間で進め方等につき,打ち合わせを行うことで,研究内容にかかる情報の共有化も図ってきた。 また,平成29年度は平成28年度に実務家との打ち合わせにより得られた知見に基づき,国際家事メディエーションにかかる課題を洗い出すため,実務家への当該テーマにかかる情報発信をさらに促進し,実務家の参加をより積極的に取り入れた共同研究の推進にも務めた。具体的には,国際家事メディエーター養成講座を平成28年度に引き続き開催(平成28年6月から8月にかけて15回),ドイツの国際家事メディエーション機関であるMikkから講師を招聘しての国際家事メディエーション実務講座(5月12日から14日:講師 Mikk クリストフ・パウル氏,クリスチャン・フォン・バウムバッハ氏),アメリカでの国際家事メディエーションに関する情報共有並びに講演会(10月20日:講師 アジア太平洋アメリカ紛争解決センター・メディエーター尾崎としえ氏),フランスにおける国際仲裁・国際調停にかかる講演会(10月25日:講師 北浜法律事務所外国法事務弁護士 アリソン・フェリックス氏)などを開催すると同時に,外務省,大阪弁護士会,日本仲裁人協会関西支部などと共催で,「米国におけるハーグ条約事案の司法手続や親権・監護権にかかる判断の傾向」(平成30年2月8日:講師 マイルス&ストックブリッジ弁護士事務所 家族法部長 スティーブン・カレン氏)も開催した。 これら実務家との交流や意見交換を重ねる中で,日本における国際家事メディエーションの抱える課題がより大きく認識されるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請当初は,文献研究や諸外国の実態調査を主として行う予定であったが,それにもまして日本における実務上の課題が山積していることが平成28年の研究開始年度に明らかとなった。その要因としては,ハーグ条約の日本での実施が本格化したこと,同条約の趣旨が完全には理解されないままに日本での国際家事メディエーションが進められていること,などが挙げられる。そのため,申請時には,研究開始2年目である平成29年度は諸外国に軸足を置く予定としていたが,その予定を変更し,むしろ日本の実務家との問題の共有化に務め,文献研究によって諸外国との比較を行うという方針に転換することが必要であると判断した。そのため,当初の予定よりも日本の実務志向が強くなりはしたが,それによって本研究全体の進捗状況が妨げられたとは考えておらず,むしろ課題の洗い出しに大きく貢献できたものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように,申請時には想定されなかった,日本における国際家事メディエーションの抱える実務上の課題が過年度の研究によって具体的に明らかとなってきた。そのため,引き続き,日本の実務家との意見交換や情報共有並びに研究会やシンポジウムを通じて,実務上の課題を洗い出しながら,諸外国における状況や研究状況の調査研究も継続して行っていく所存である。具体的には,平成30年度もMikkから講師を招聘して,実務家とのワークショップを開催し,その後に,Mikkの実務家,またイギリス等の国際家事メディエーションの経験を有する諸外国からの研究者を招聘したシンポジウムを開催する予定である。
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