2018 Fiscal Year Annual Research Report
持続可能な経済発展と経済刑法理論-新たな社会への対応と「市場」「競争」概念
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16H03559
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
上嶌 一高 神戸大学, 法学研究科, 教授 (40184923)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田 直樹 神戸大学, 法学研究科, 教授 (10194557)
宇藤 崇 神戸大学, 法学研究科, 教授 (30252943)
東條 明徳 神戸大学, 法学研究科, 准教授 (40734744)
池田 公博 神戸大学, 法学研究科, 教授 (70302643)
嶋矢 貴之 神戸大学, 法学研究科, 教授 (80359869)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 経済刑法 |
Outline of Annual Research Achievements |
年度中に以下の業績を公表した。 分担者小田による論文は経済刑法を「経済法のエンフォースメント」の手段として語る一般的な傾向が,法益を人的なものと捉えて批判的に眺める見方と,「経済秩序」レベルで捉えて肯定的に眺める見方との,二極分化に至る可能性が高いことを前提認識として,「制度」の把握という次元を設定して議論の枠組みを変えることを目指しつつ,それを具体化するものある。民法=委任という契約制度を一次規範とした背任罪の捉え方を論じ、続いて,会社法を一次規範としたとした特別背任罪の捉え方を論じた上で,<(法益侵害説ベースの)刑法解釈における「制度」論の活かし方>を示すことを目指している。 近年、わが国において大きな社会問題となり、他方で刑法解釈上の問題を多岐にわたりなげかけている、特殊詐欺に関する研究も研究組織で取り扱うこととした。代表者上嶌による論文は、経済取引に関し、最近急速に実務上だけでなく学界においても重要な問題として注目されている特殊詐欺について、共犯論についての判例をふまえ、理論的検討を行い、判例の意義・問題点を示そうとするものである。分担者東條による報告は、特殊詐欺における実行の着手時点が問題となった最判平成30年3月22日を、実務家研究者合同の研究会で取扱いこの問題に未遂犯の専門家としての立場から検討を加えた。 経済犯罪において有効な捜査手法について、分担者池田の論文および報告は、捜査対象者の意思のいかんが捜査手法の評価に及ぼす影響を論じ、客観証拠の保全、内容の理解に際して事情を知る者の協力が大きな役割を果たす経済事犯の捜査にも適用可能な内容を含み(井上古稀)、経済事犯の解明に大きな意義を有するものとして制定された協議合意制度の導入(2018年6月)に先立ち、理論的検討を加えている(実務家との研究)。 また恐喝罪を取り扱った昨年度のワークショップを公表した(分担者嶋矢論文参照)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
経済刑法と刑法総論との対話という点については、特殊詐欺をめぐる近年の複数の判例の登場により活性化しており、その点を研究課題に取り込み、法益、未遂、共犯等の総論解釈論問題に積極的に取り組んでおり、社会的必要性の高い、有意義な研究成果を複数あげ、さらに今後の進捗も後述のように強く見込まれるところである。 また、背任罪をめぐっては新たな経済刑法の見方を切り開く連載を開始し、それらを総合した注釈書の執筆も順調に進んでいる。 くわえて経済事犯に有効な捜査手法についても、様々な面で研究が進んでいる。 他方で、幅広く経済刑法の諸犯罪に関して、研究を進め、業績を公表することに課題を残している。以上から概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
わが国の社会問題となり、刑法解釈論上も重要な問題を投げかけている、特殊詐欺について、研究対象に本格的に取り込んで、組織としてさらに研究を進捗させる予定である。今年度の刑法学会では分担者嶋矢が、同テーマのWSにおいて報告者を担当し、研究成果の中間的な公表を行い、そこからフィードバックを得ることを行う。また、分担者東條も研究報告の公表とそれらを総合した未遂犯の問題に関する研究を進める予定である。 また、背任罪について、分担者小田による連載中の論文の完成を目指し、また、代表者上嶌が注釈書の執筆を通して、総合的な議論の完成を目指す。 また、捜査手法について引き続き、経済犯罪対策として有効な手法について、訴訟法分担者が研究を行うこととする。 本年度は最終年度に当たるため、研究テーマの最終とりまとめとそれに向けた積極的な報告とその組織へのフィードバックを目指す予定である。
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Research Products
(9 results)