2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16H03566
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
森下 哲朗 上智大学, 法学研究科, 教授 (80317502)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小出 篤 学習院大学, 法学部, 教授 (20334295)
加藤 貴仁 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 准教授 (30334296)
得津 晶 東北大学, 法学研究科, 准教授 (30376389)
道垣内 弘人 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (40155619)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | フィンテック / FinTech / 金融法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、主として、①欧州における海外実地調査、②関係文献・資料の収集、③法的問題点のリストアップ及び初期的な検討、を実施した。 ①欧州における実地調査では、FinTechの最先端国である英国(10月、3月)及びエストニア(3月)の調査を実施した。現地の弁護士、企業実務家、研究者、当局者等から、両国におけるFinTechの取組みの状況や、法的な問題点についての検討の状況を聴取した。特に、英国におけるRegulatory Sandboxの取組み、Payment Service Directive2に関する法的問題、ブロックチェーンに係る法的諸問題について、情報収集や意見交換を行った。FinTechに関する実務の状況は国によって様々な違いがあり、法的問題に関する議論の状況にも違いが見られるが、何れの国においても共通で悩んでいる法的問題としては、例えば、ITを利用した取引における本人確認の問題、ブロックチェーンを用いた場合における適用法規の問題等があげられる。 ②国内外の関係文献・資料の収集を日本及び欧米を中心に進めた。書籍や雑誌文献はもとより、インターネット上で多くの情報が提供されており、重要なウェブサイト等の把握にも努めた。 ③上記①②の成果を活かしながら、FinTechのうち、特に、仮想通貨、ブロックチェーン、決済制度に関して、法的問題点の検討を進め、初期的な検討結果を書籍、雑誌、シンポジウム、講演会等で積極的に公表した。海外でも研究成果の公表を行った。例えば、1月にハーグで開催されたシンポジウムにおいては、仮想通貨、ブロックチェーン取引と適用法規、スマート・コントラクトについて報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、欧米及び国内の実地調査を行い、FinTechに関する実態を把握するとともに、法的問題をリストアップすることを計画していた。このうち、欧州の実地調査については充実した調査が出来たものの、米国については実地調査を行うことができなかった。国内については、様々な機会を使って、各メンバーが国内のFinTech事情や法的課題についての調査等を行った。 法的問題の検討という点では、初年度ではあったが、単なる法的問題のリストアップにとどまらず、欧米における法的問題の検討状況の整理や、日本法のあり方についても踏み込んだ研究を行い、一定の成果の公表もできた。 したがって、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度も海外調査に力を入れるが、本研究においては、調査の対象は欧米に的を絞りたい。欧州については、初年度に一定の調査をすることができたが、米国については調査が出来なかったため、2017年度は米国の実地調査をぜひとも実施することとしたい。欧州についても引き続きフォローしていく。また、国内のフィンテック関係者へのインタビューも実施し、欧米の状況との相違などについても検討することとしたい。
法的問題の検討については、既に一定の成果が出ている仮想通貨、ブロックチェーン、決済制度等についての研究を引き続き実施するとともに、ロボ・アドバイザー、本人確認制度等、その他の論点についても検討を行うこととしたい。また、わが国においてもRegulatory Sandboxについての議論がなされており、欧米の状況を参考に、金融規制のあり方についても検討していくこととしたい。
FinTechの進展の速さを考えると、研究成果については、できるだけ迅速に公表していきたいと考えているが、今後は、国内のみならず国外での英文での公表についても取り組むこととしたい。また、公開の研究会あるいはシンポジウムを実施し、中間的な研究成果を公表したうえで、実務家や研究者の見解を問うような場を設けることとしたい。
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