2017 Fiscal Year Annual Research Report
Compensation Scheme for East Japan Earthquake Radiation and Tsunami Victims' Living Welfare and their Community-Building Challenges: Interdisciplinary Discussions
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16H03569
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉田 邦彦 北海道大学, 法学研究科, 教授 (00143347)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻内 琢也 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (00367088)
今野 正規 関西大学, 法学部, 教授 (10454589)
家田 修 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 特任教授 (20184369)
松本 克美 立命館大学, 法務研究科, 教授 (40309084)
米村 滋人 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (40419990)
淡路 剛久 立教大学, 名誉教授, 名誉教授 (90062653)
今中 哲二 京都大学, 原子炉実験所, 研究員 (90109083)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 放射能被害 / 原賠訴訟 / 疫学 / 因果関係論 / 潜在的損害 / 自主避難者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の作業は、大きく国内研究の継続と海外調査の開始・継続に分けられる。そのうちの前者については、第1に、原賠研(福島放射能被害に関する原賠法訴訟に関する定期的研究会)が定期的にあり(分担者淡路は、共同代表者)、2017年3月の前橋判決以来の福島原賠判決を責任論と損害論に分けて関連弁護士と議論し合った(同年4月、5月、7月、12月(吉田報告)、2018年1月)。同研究会の多数説の〈包括的生活利益侵害〉論では、必ずしも、損害賠償が膨らまず、また自主避難者の賠償の必要性が高いのに、司法の行政基準依存が高いためか成果は貧弱で、多くの課題が残されていることが明らかとなった。それとともに、本研究がテーマとしているコミュニティ崩壊の問題に関する法的救済の限界も課題である。
第2に、国内研究としては、比較対照すべきものとして水俣病研究を進め、その被害のとらえがたさは福島放射能被害と同様で、本領域での疫学研究のあり方にも関心は深まった。この点で、津田教授(岡山大学)との研究上の交流を強めている。さらにそれに関するノーモアミナマタ訴訟の弁護士らとの定期的意見交換も有益である(2017年7月、2018年1月)。また、ガス弾(化学兵器)による被害問題も類似し、京大でシンポに参加し,チチハルでの被害調査も行った(2017年9月、11月)。いずれにしても、本研究が副題で掲げる〈医師との対話・議論〉の必要性を痛感している。また学際的連携作りとして、福島の被害の社会学的調査を行う成元哲教授(中京大学)と意見交換した(2017年4月)。
次に後者(海外調査)の成果としては、第1に、水俣病調査の延長線上で、カナダ水俣病の現地(グラシーナロウズ、ホワイトドッグ)調査(2017年9月)自体は衝撃的で、第2に、比較すべき海外の放射能被害調査として、スリーマイル島、グアムで調査を開始した(2017年10月、12月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第1に、原賠研での意見交換は、近時の判決の多数の登場もあり、濃密に行ったが、そこにおける課題も明らかになり、法学の射程でだけで克服できないものも少なくないことも痛感している。それと同時に、法学内在的にも、疫学研究など学際研究を今後とも進めたい。
第2に、福島放射能被害の比較参照の海外事例として、スリーマイル島事故、グアムさらにはマリアナ諸島における被曝実態調査に着手し、かなり進捗をみた。分担者今中の関連の報告会の成果との関わりも認識できて、有益な意見交換もあり、今後とも相補的に活かせることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
第1に、コミュニティ回復のための学際研究など,まさしく本研究の課題が喫緊であるが、これは難題であることも痛感しているが、例えば、大規模な人権蹂躙がなされた補償事例(例えば、隣国の済州島の悲劇、カンボジアの悲劇)の事後的な〈修復的正義〉〈社会的治癒〉に関する研究成果等とも融合的に進めたい。
第2に、もとより、放射能被害という損害の特殊性に即した法理の構築、そのための医者との疫学研究の必要性からこの方面の日米研究も含めて、学際研究の本格着手を痛感している(これは法学内在的問題としてである。既にこの側面の研究には着手しているが)。
第3に、海外調査からの解決の糸口の模索も、鋭意続けていきたい。
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Research Products
(22 results)