2016 Fiscal Year Annual Research Report
The System of European Consumer Law and Consumer's Right
Project/Area Number |
16H03571
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
鹿野 菜穂子 慶應義塾大学, 法務研究科(三田), 教授 (10204588)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中田 邦博 龍谷大学, 法学部, 教授 (00222414)
若林 三奈 龍谷大学, 法学部, 教授 (00309048)
馬場 圭太 関西大学, 法学部, 教授 (20287931)
宗田 貴行 獨協大学, 法学部, 准教授 (60368595)
カライスコス アントニオス 京都大学, 法学研究科, 准教授 (60453982)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 消費者法 / EU法 / 民法 / 比較法 / 民事手続法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、3年間にわたる本研究の初年度に当たるため、特にEU消費者法そのものに関する文献・資料の収集に力を注ぐと共に、海外の状況に関する全般的な調査及び海外研究者との意見交換・情報交換に力を入れた。 より具体的には、まず、平成28年8月に、ドイツ・ハンブルクのマックスプランク外国私法・国際私法研究所を訪問して、文献調査を行うとともに、各国の研究者とミニ・セミナーを開き情報収集を行った。 また、国内での研究会を重ね、消費者法の中でも特に広告をめぐる問題について検討を深めた。そのうえで、代表者と共同研究者が中心となって、平成28年度10月の消費者法学会のシンポジウムにおいて、その研究成果を報告した さらに、海外から研究者を招聘して、それぞれ講演会と意見交換の機会をもった。具体的には、まず平成28年7月に、マックスプランク研究所の所長であるユルゲン・バーゼドー教授を招聘し、「ヨーロッパ契約法とデジタルアジェンダ」というテーマで講演会を開いた。ここでは、ヨーロッパ売買法規則提案がその後どのような変遷をたどり、どこに向かっているのかの分析が示され、消費者法と一般契約法の関係につき有益な示唆が得られた。同年10月末には、スペインからルス・M. マルティネス・ヴェレンコソ教授を招聘し、「平準化されたヨーロッパ私法及びアキ・コミュノテールのEU加盟国法へのインパクト」というタイトルで講演会を開いた。そこでは、EU全体の状況とともに、その中でスペインがどのような状況にあるのかも紹介された。平成29年3月には、フランス人で、マックスプランク研究所の主任研究員でもあるサミュエル・ルメール氏を招聘して研究会を開きフランスの状況等についての報告を受けた。これらの講演等をとおして、EU消費者法と加盟各国法に関する最新情報が得られるとともに、平準化・体系化における課題を再認識することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EU消費者法に関する最新の情報については、上記の研究活動によって収集分析が進んだ。また、EU加盟各国に対する影響についても、特に従来手薄であったスペイン等の情報なども得られ、進展が見られた。 イギリス消費者法においても近年大きな変化があり、その研究もかなり進んだ。もっとも、イギリスについては、EU離脱の方針を打ち出したことから、今後の情勢に変化が見られることも考えられ、その点をさらに注視する必要がある。 2017年3月に予定していたギリシャ・イタリア等の調査が一部次年度に延期となったので、その点については完全に予定通りとはいえないが、他の国についての調査が予定以上に進んだので、全体としては大幅な遅れがあったわけではない。 なお、体系性の観点からの分析は、現時点では未だ十分に進展したとまではいえないが、当初の予定においても、この点については主に2年目以降に重点的に行うことを予定していたので現時点で遅れているという認識はない。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究を踏まえて、平成29年度は、一方でEUの消費者法全体の包括的な動きについての検討をさらに続行し、特に共通売買法規則提案が変遷して新たに出てきた2つのデジタルアジェンダについて検討を加えるが、他方で、各国の消費者法の展開に関する分析に一層力を入れる。そこでは、EU指令が各国消費者法にいかなる影響を与えているのかを明らかにするための作業を進める。 調査対象国としては、ドイツ、イギリス、フランスの調査とともに、オーストリアおよび南欧諸国を中心とし、これらの国における消費者実体法の内容とともに、実効化策(差止請求権、違法な収益の剥奪請求権、損害賠償請求権など)にも着目する。EUの域内市場の平準化を目的とした指令を各国の国内法が受け入れる場合には、国内法の体系に変容をもたらし、その変容の仕方は国によって違いがある。そこで、平成29年度の本研究では、EU立法の各国国内法への影響に関する分析において、各国の消費者法の全体構造の変容と、その地域的な偏差を分析する。 他方で、平成29年度には、消費者法の体系化・構造化に関するヨーロッパの議論についての検討を進める。法典化に関するテーマについて、現地調査の機会に意見交換会(ミニ・セミナー)を開くことや、この問題に精力的に取り組んできた研究者を招聘して国際研究集会を開くことなども予定している。
|
Research Products
(19 results)