2016 Fiscal Year Annual Research Report
Realignment of Political Parties and Ideological Polarization in the United States-Cumulative Effect of Primary and Policy Ideas
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16H03577
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保 文明 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (00126046)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山岸 敬和 南山大学, 外国語学部, 教授 (00454405)
松岡 泰 熊本県立大学, 総合管理学部, 教授 (40190425)
菅原 和行 釧路公立大学, 経済学部, 准教授 (90433119)
宮田 智之 (近藤智之) 帝京大学, 法学部, 講師 (00596843)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アメリカ / 民主党 / 共和党 / 政党再編成 / イデオロギー / 政策案 / 分極化 / ドナルド・トランプ |
Outline of Annual Research Achievements |
予備選挙と政策案に関する基礎的資料・データを収集しながらも、同時進行した大統領選挙の展開についても、相当程度の分析作業を行った。大統領選挙の予備選挙そのものもそれ自体本プロジェクトの研究主題であり、また反エスタブリッシュメントを掲げ、ワシントンDCのシンクタンク・コミュニティに足場をもたない大統領公認候補ドナルド・トランプが、どのような形で政策案を調達するかという文脈でも、きわめて貴重な事例ともなった。2016年7月後半に実施された民主・共和両党の全国党大会を視察したほか、17年2-3月にはワシントン・ニューヨークを訪問して、研究者のみならずシンクタンク幹部あるいは政策専門家と意見交換することにより、報道や研究書では入手できない解釈や知見を得ることもできた。とりわけ、共和・民主両党において、エスタブリッシュメント候補が敗北あるいは苦戦し、反エリート的立場をとる候補(すなわちトランプ、あるいはバーニー・サンダース)が台頭したことは、アメリカ政治のダイナミクスそのものが大きく変容しつつあることを示唆するものであった。この点については、短いものが中心であるが、いくつかの論考で分析の成果を披露することができた。 同時に、いわゆるトランプ現象につき、共和党内政治力学の動態から分析するだけでなく、トランプによる「南部戦略」ならぬ「北部戦略」として捉える視点を試論的に提供し、研究の枠組みとしては、潜在的に政党再編成を引き起こす可能性、さらにはイデオロギー的分極化を一部融解させる可能性をも想定するに至った。研究成果としてはほとんどがまだ簡略な分析を提供したものに過ぎず、仮説提示的な短い論考、あるいは口頭報告の速記録などであるが、次年度よりさらに本格的に、収集した資料・データとも照合しつつ、検証していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
いわゆるトランプ現象はかなりの程度想定外の現象であったため、これにどのように対応するかで若干苦慮した。これまで観察されてきたきわめて厳格に整除されたイデオロギー的分極化が変容する可能性が、近年では初めて示唆されたともいえよう。 資料・データの蒐集という点ではとくに支障はきたさなかったが、研究の視野を単に狭いワシントンDCの政治のプロフェッショナルな人々のコミュニティを越えて、トランプに大量得票したようなオハイオ州南部カウンティの白人ブルーカラー層の生活感情などにも広げる必要に迫られているともいえよう。そのような意味で、本年度は研究面での、とくに分析枠組みを整理し直す作業において、対応がやや遅れた観は否めないものの、分析の作業そのもの、あるいは研究業績・アウトプットとしては、ある程度順調に生産されてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
共和党の性格が変容する可能性も視野に入れつつ研究を遂行する必要を感じている。トランプは、強烈な反不法移民の立場、保護貿易主義、そして孤立主義という三点セットにおいて、これまでの共和党大統領公認候補と著しく政策が異なっていたが、その結果、ペンシルベニア、オハイオ、ミシガン、ウィスコンシン、アイオワなどの州の多くのカウンティにおいて驚異的な大量得票を達成した。それに対して、民主党はますますLGBT, ジェンダー、人種的・民族的少数派、コスモポリタンな世界観をもつ高学歴層を支持基盤にするようになり、労働者票の争奪戦において分の悪い戦いを強いられている。今後はこの側面にもより多くの資源を投入して分析していきたい。
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