2017 Fiscal Year Annual Research Report
Realignment of Political Parties and Ideological Polarization in the United States-Cumulative Effect of Primary and Policy Ideas
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16H03577
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保 文明 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (00126046)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山岸 敬和 南山大学, 国際教養学部, 教授 (00454405)
宮田 智之 (近藤智之) 帝京大学, 法学部, 講師 (00596843)
菅原 和行 福岡大学, 法学部, 教授 (90433119)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 民主党 / 共和党 / アメリカ / トランプ / 保護貿易 / 自由貿易 / 予備選挙 / 政策案 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年大統領選挙の分析を、本科研プロジェクトのテーマの文脈において、すなわち予備選挙と政策案の相乗効果という観点から、引き続き行ってきた。共和党では、大統領候補として指名されるためには国際主義かつ自由貿易主義支持で戦うことが長期にわたって正統的な政策的立場とされてきたが、トランプはそのどちらにも反する公約を掲げて勝利した。この傾向は、ティーパーティが台頭した2009年頃から、一部の共和党議員にも散見される。本研究ではこの現象も視野に入れて、2016年のみでなく、それに先行する選挙も含めて分析を行った。 現実政治においても重要と思われるのが、近年観察される共和党の変化である。2010年頃から共和党支持者の方が民主党支持者より保護貿易主義的である、この傾向に乗ってとクランプは共和党内の指名争いを勝ち抜いた。共和党が保護貿易主義者を大統領候補に指名したのは1945年以降初めてのことである。そして、このトランプ路線は、共和党所属の連邦議員の態度に影響を与えている。ここに、共和党が全体として変化していく可能性が存在する。この可能性についても、日米関係の文脈で指摘することができた。 さらに2017年度には、近年の民主党・共和党の変化に関するこれまでの研究成果の一部を盛り込んだ『アメリカ政治史』(2018年3月)だけでなく、『アメリカ政治とシンクタンク』も刊行された(後者は平成30年度大平正芳賞の受賞が確定)。また、予備選挙を通じた政党内部の主導権争いと政策案の交錯する場としての大統領候補、大統領、ホワイトハウスという視点から大統領権限についての分析も行い、原稿の執筆は完了した(2019年5月刊行予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 英語文献(East Asia Forum Quarterly)を含む多様な形態および媒体で研究成果を発信することができた。 2. アメリカ合衆国ではシカゴ大学、シカゴ国際問題評議会、マルケット大学(ミルウォーキー)、ドレイク大学(デモイン)、スタンフォード大学、ミシガン大学等での講演を行い、またオーストラリア国立大学にも招聘された。 3. すでに2017年度末にアメリカ政治の概説書において本プロジェクトの研究成果を盛り込むことができたが、本年度もアメリカ政治史の概説書において、トランプ台頭とその背景にあるアメリカの政党政治の変容につき、触れることができた。 4. 大統領権限について焦点を当てた論文集をまとめることができ、そこにおいて、政党の変容、予備選挙制度の影響、そして政策案が果たす役割を論ずることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
専門家の意見交換、資料収集、および聞き取り調査を勧めつつ、これまでの事例研究、資料収集、先行研究の調査をもとにして、研究のとりまとめに活動の中心を移していきたい。 とくに政策案を製造するシンクタンクの機能について、今年度以降は十分に注意を払っていきたい。アメリカの歴代の政権の中で、トランプ政権ほど、ワシントンのシンクタンク・コミュニティと疎遠な関係をもった政権は存在しない。この型破りな政権の下で、政策案が、そしてシンクタンク業界がどのような役割を果たし、どの程度政権に影響力を及ぼすかについても、分析を進めていきたい。
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