2017 Fiscal Year Annual Research Report
紛争後の国家建設と治安部門改革:リベラルな価値導入の理念的妥当性と実現への条件
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16H03591
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
藤重 博美 法政大学, グローバル教養学部, 准教授 (20509864)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上杉 勇司 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (20403610)
古澤 嘉朗 広島市立大学, 国際学部, 准教授 (20612922)
篠田 英朗 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (60314712)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 国家建設 / 平和構築 / 治安部門改革 / SSR / 自由主義 / ローカル・オーナシップ / リベラリズム / ハイブリッド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、理論的には、当初設定した研究設問である「自由主義的な思想を国家建設に適用することの妥当性」から、さらに一 歩踏み込み、自由主義的な価値に基づく国家建設の妥当性に疑問があるとすれば、どのような代替策があるのか」という設問を主軸とすることにし、「自由主義的な国家建設論」に対する批判、その代替案としての「現地重視(ローカル・オーナーシップ)」の検討と批判、さらに、自由主義的な国家建設と現地重視の「ハイブリッド(混合)」のあり方を検討することにした。 このように本研究は、国家建設の今後の方向性について、理論的研究と事例研究の双方から取り組んでいる。本研究については、昨年度前半は研究代表者が在外研究中であったこと、また、研究計画に参加する研究者の拠点が国内各所に散らばっていること、参加する研究者の数が計11名に増えたことなどから、全員が一堂に会して議論する機会を持ちにくいことが課題であったが、この問題に関しては、メール連絡を緊密にすることにより問題を克服した。 3カ年計画の2年目に当たる平成29年度は、引き続き調査研究を進めながら研究の成果発表も行った。代表者の藤重は主に上記の11名参加の共同研究プロジェクトを進める一方、ミャンマー、英国での調査を行なった(ミャンマーではハイブリッドな国家建設に関する被支援側の視点、英国では支援側の視点を調査。両国とも主に政府関係者に聞き取り)。分担者(上杉、篠田、古澤)も上記プロジェクトに参加する一方、それぞれ個別に関連する研究を進め、個々に成果発表を行なった。古澤は英国(主にロンドン大学図書館、イギリス公文書館)にてシエラレオネの植民地時代の一次・二次資料の調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、内戦に苦しむ国々の国家再建をテーマとするが、多岐にわたる国家再建の活動の中でも、特に治安部門改革(Security Sector Reform : SSR)に注目して理論的検討および事例研究を行うものである。こうした改革を国際社会主導で行う場合、往々にして西欧由来の自由主義的な思想を基盤としがちであることの批判的視座から、現地重視(ローカル・オーナーシップ)との融合を図る「ハイブリッドな国家建設」の可能性と課題について研究を進めている。この研究課題に取り組むため、当初、シエラレオネ、東ティモール、南スーダンの3カ国を事例研究の対象とする予定であったが、南スーダンについては現地の治安悪化が深刻であり、外務省から退避勧告が出ている状態で現地調査を行うことが事実上不可能となった。 この問題を克服するため、本研究課題では、2016年度後半研究体制を拡大し、南スーダンを事例研究から外す一方(シエラレオネ、東ティモールは継続)、ジョージア(グルジア)、ボスニア・ヘルツェゴビナ、イラク、アフガニスタンの事例を追加、計6つの事例を調査することした。南スーダンの調査を行う代わりに、事例研究の数を増やすことにより、研究の制度を高めることを目指したものである。 新研究体制の詳細については2016年12月、2017年3月に研究会を開催して研究の方向性および各自の分担を決めた後、2017年度前半は代表者(藤重)が在外研究中であったため主にメールによって進捗状況を確認し、後半は2回に渡り、進捗状況を確認するための会合を持った(10月@神戸、2月@東京)。また、2017年度後半には各人の研究成果を取りまとめ、学術書として出版するための準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度後半に本研究課題の研究体制を拡大して以降、研究は概ね順調に進んでいるため、最終年度である本年度は研究成果の取りまとめおよび公表に比重を移していく。本年度の前半は、各研究者の研究成果を取りまとめるため、研究会を東京・ 広島で開催して研究成果の取りまとめをおこなう。その成果は学術書(和書)としてとりまとめる。本年度後半に は、公開ワークショップ(12月東京で開催予定)、人間の安全保障学会(12月広島で開催予定)でのパネル発表のほか、Web上 に報告書を掲載するなどし、広く社会に成果を公表することを目指す。本年度後半には、英文での成果取りまとめと出版も目指す。また、個々の研究者ごとに、研究成果を学術論文などとして公表するようにも努める。上記の研究成果取りまとめ・公表過程においては、研究分担者、研究協力者がメールやクラウドストレージなどを利用して研究成果を共有し、お互いにコメントを出し合い、その結果をふまえて研究代表者、分担者(計4名)が本研究の結論を導き 出す予定である。この過程と平行し、研究代表者は欧州、米国での研究調査も行うとともに、研究の暫定的な成果に対するフィードバックを求 め、研究の制度を高めることを目指す。また、研究成果の一部は、報告書としてオンライン上で公開することも検討している。
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Research Products
(9 results)