2019 Fiscal Year Annual Research Report
Endogeneity of social preference and risk preference in games
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16H03597
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
西村 直子 信州大学, 学術研究院社会科学系, 教授 (30218200)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青柳 真樹 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (50314430)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 実験経済学 / リスク選好 / 曖昧性選好 / 社会的選好 / 協調ゲーム / matching probability / 不平等回避 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,(1)ゲーム構造と相互性発動の関係と(2)ゲーム構造とリスク・不確実性選択の関係の2点を再検討し,戦略的関係とリスク・不確実性選好,さらに社会的選好との相互作用について新たな知見を得ようとするものである。(1)については既に本実験を終え,利害が対立するゲームでも,「意図」を顕示できる手続きがゲーム内にあれば,協調がより達成され効率的結果がより得られやすくなることを示し,H30~H31年度中にかけてワーキングペーパーにまとめ,学術雑誌に投稿中である。 H31年度の作業は,(2)のうち,確率を付与できるリスクと社会性とのリンクをテーマにした。社会的選好を視野に入れると,所得分配に関する社会的選好とリスク選好を実験データから分離するのは困難であり,明確に分離した研究報告は現在のところない。本研究では,社会的選好とリスク選択行動の実験室における測定を介して両者を分離する方法を提案し,その実験上の有効性を示した。その成果を実験社会科学カンファレンスで報告し,現在投稿準備中である。ゲーム的戦略的要素がある場面の実験を実施し,上記手法をここに拡張する研究を進めている。 さらに,戦略的状況があるがために生じる不確実性を確率が付与できないambiguityとして認識される場合に,ambiguityに対する評価姿勢と戦略性とのリンクに関する本実験実施に至った。複数種類のゲームを用意し,ゲームの特性に依存して,どの解に向けて参加者の志向性が協調を生み,それがどのように人々の不確実性の評価を左右するかを検討するための実験をデザインした。 なお,岡野芳隆・舛田武仁の両氏を研究協力者として擁し,共同研究を実施している。リスク姿勢については,その研究成果の一部がMasuda-Lee(2019),協調ゲームについてはAoyagi-Nishimura-Okano(2019)に反映されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)に関しては計画通り,これまで得た知見をまとめて雑誌へ投稿するに至っている。 (2)の社会的選好とリスク選好との分離研究に関しても,ゲーム的要素を含まないタイプの本実験を実施し,含むタイプの本実験も一応完了し(一部追加実験の必要があるかもしれないが),知見をまとめる作業へ移行していると共に,それら暫定的知見を各所で報告するに至っている。 (2)のambiguity設定に関する研究に関しては,当初計画通り基本部分に関する実験データは獲得し,分析作業を進めている。しかし,発展的部分に関する実験や,追加実験の必要が生じる可能性を残している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後研究を進めていくうえで,次の3点が課題となる。 ①リスク選好と社会的選好を分離する手法に関しては,ゲーム要素を含む場合に分析を拡張し,ゲーム的状況が発動する社会的選好とリスク選好との相互作用に関する知見をまとめる。 ②ゲームが内生する不確実性が,確率的に把握されない「曖昧性」として認識される場合の基本部分(ベース)について,H31年度に実施した本実験データを下に分析を進める。ゲームにおける協調志向への期待として社会的選好が発動されるときに,不確実な事象に対する人々の評価に論理性の破綻が生じるかのようなデータが取得されるケースについて,その要因の特定の分析を進める。
③第3点目として挙げる必要があるのは,R2年度におけるコロナ状況下での問題である。実験室は密集・密室状態であるため,追加実験実施に大きな支障が生じるのは必須である。また,得られた知見を報告する機会も地域の移動が限定されるため激減する。研究プロジェクトの最終局面に至るにあたって,非常に大きな支障として予想され,回避の方法は今のところ不明である。
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Research Products
(24 results)