2016 Fiscal Year Annual Research Report
顕在化するリスクの計量化とリスク伝搬に関する統計的推測と実証研究
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16H03605
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大屋 幸輔 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (20233281)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新谷 元嗣 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (00252718)
高橋 慎 大阪大学, 経済学研究科, 講師 (20723852)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 金融市場 / 予測モデル / ボラティリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
時々刻々と変化する金融市場の状況をとらえるために,その市場を代表するインデックスを観測対象とすることが基本となる。日本市場の場合は日経平均がその対象となるが,公開されているインデックスの観測頻度は15秒間隔であり,市場の急変を捕捉するには十分ではない。本研究では公式な算出方法にしたがって,秒次の日経平均を算出し,市場に大きな変化をもたらすリスク事象との関連をより短い時間間隔での観測データにより明らかにしようとしている。研究初年度は,ティックデータの整備を主に行った。他方,金融市場で観測される主要な変数間の関連性としての因果性の大きさを周波数領域で分解し,どの周波数成分,言い換えると,どの周期の変動が大きな因果性をもたらしているのかなどを明らかにするための手法開発にも取り組んだ。 リスク事象の顕在化をどのように捕捉するかに関しては,現時点ではボラティリティや市場における注文不均衡に関する情報を指標化することを検討中である。金融市場における価格変化の先行指標とも考えられる注文不均衡に関しては,具体的に注文板モデルに基づいて,日経225先物ミニ市場における注文不均衡と価格変化の関係の分析を行った。その研究成果は「先物・オプションレポート」に発表された。またS&P 500 E-mini先物については,注文不均衡と取引価格変化率の関係をより詳細に分析し,その研究成果を日本ファイナンス学会第24回大会で発表した。さらに市場が何らかのリスク事象から影響を受ける場合,その影響を表すモデルの候補として非線形時系列モデルの適用可能性も考慮している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
株式市場を代表するインデックスである日経平均の利用可能な観測頻度が15秒であることから,ティックデータを用いて,秒次の日経平均の算出を計画している。現在までは,主にティックデータの整備を行っている。顕在化リスクに対する早期警戒指標の開発では,従来提案されたきた手法の再検証や,具体的な注文不均衡の情報の利用などの検討を重ねている。リスク事象顕在化の可能性に関する研究では,これまではボラティリティの利用を基礎とした分析を遂行している。以上のことから概ね順調に計画は推進していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
秒次の日経平均の算出を可能とする体制を整え,算出されたインデックスを用いた分析を開始することを予定している。顕在化リスクに対する早期警戒指標の開発に関しては,指標を特徴付ける設定値の決定における恣意性の排除に取り組む。また実現ボラティリティなど,市場で観測されるティックデータを利用して構築可能な他の指標との先行・遅行関係の検証を通じて,新たな早期警戒指標の構築の可能性を探る。またリスク事象顕在化の可能性に関する研究として,ボラティリティ以外に,バリアンス・リスク・プレミアムがどの程度,市場に関する情報を有しているのかを検証する予定である。
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