2019 Fiscal Year Annual Research Report
顕在化するリスクの計量化とリスク伝搬に関する統計的推測と実証研究
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16H03605
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大屋 幸輔 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (20233281)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新谷 元嗣 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (00252718)
高橋 慎 法政大学, 経営学部, 准教授 (20723852)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 金融市場 / 予測モデル / ボラティリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
市場参加者のリスクに関する態度は市場の動向へ大きく影響を与えると考えられる。代表的な市場参加者の効用関数に関して特定の型を想定したとき、彼らの相対的リスク回避度が現実測度とリスク中立確率測度のもとでのそれぞれのモーメントの関数として表現できることが、様々な先行研究により明らかになっている。大屋は,日本の株式市場を分析対象とし、その相対的リスク回避度の推定を行い、2008年からの金融危機以前においては低下傾向にあったリスク回避度は、金融危機時に上昇するが、その後、再び低下傾向を示し、金融危機以前より低い水準となっていることが明らかとされた。この研究成果は学術誌,および国内外の学会において報告が行われた。新谷は,物価上昇率、国債市場リスク、経常収支等の経済変数を説明するための動学的マクロ経済モデルを推計し、将来予測や政策効果の測定に役立てた。またマクロ変数の因果性を分析するために一般的な系列相関構造を許容する時系列モデルの理論分析を行った。これらの研究成果を学術雑誌に出版し複数の国際学会で報告を行なっている。高橋は,構造型自己回帰(Structural Vector Autoregressive)モデルを用いて注文不均衡(買い注文と売り注文の差)が価格に与える影響を分析し、その日中変動の要因やマクロ経済指数の公表との関連を示した。この研究成果を国際学会において報告されている。また、電子商取引を中心に広く普及している推薦システムを応用することで式銘柄の高頻度領域(短時間)での流動性を評価する方法論を提案し、その有効性を検討した。この研究成果を国内シンポジウムで報告されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
顕在化リスクに対する早期警戒指標の開発では,従来提案されたきた手法の再検証に加え,バブルの検証として提案されている統計手法の応用を検討中である。リスク事象顕在化の可能性に関する研究では,高次のモーメントの情報,そして高頻度観測データの利用により,リスク回避度の計測を通して,リスク事象の顕在化を可視化する準備が進行中である。さらに,市場における価格調整速度の計測など,市場からの情報を可視化するアプローチなどの検証は順調に進んでいる。以上のことから概ね順調に計画は推進していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
金融・資本市場におけるフラッシュ・クラッシュのようなひとたび顕在化すると極めて短期間のうちに急激にその影響が大きくなるリスク事象に対し,いち早く警鐘をならす指標を開発することが第一目的であるため,これまで進めてきた研究成果をこの目的に集約させ,リスク可視化指標の開発を行う。さらに開発された指標をもちいて,リスク事象が顕在化した場合や予期されないショックが生じたときに,その影響が国際的にどのように伝播していくかを明らかにするために,リスク事象の伝播に関するモデルを構築し,実証研究を行う計画である。
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