2016 Fiscal Year Annual Research Report
フィールド実験を用いた電力小売全面自由化後の消費者行動変容の行動経済学的研究
Project/Area Number |
16H03614
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
依田 高典 京都大学, 経済学研究科, 教授 (60278794)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | フィールド実験 / スマートグリッド / デマンドレスポンス / ダイナミックプライシング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究「フィールド実験を用いた電力小売全面自由化後の消費者行動変容の行動経済学的研究」は、電力小売全面自由化後の消費者行動変容を仮説化した上で、フィールド(社会)実験を用いて検証します。それにより、変動型電気料金の体系や需要家による電力会社選択等が、デマンドピークの抑制や再生可能エネルギーの利用拡大に及ぼす経済的インパクトを、行動経済学的視点を踏まえながら研究します。シカゴ大学・伊藤公一郎助教授らとの国際共同研究を通じ、米国で先行するフィールド実験の科学的手法に基づき、日本の電力システム改革のあるべき姿についても、学術的に吟味検討します。 第1年度にあたる2016(H28)年度では、RE社会実験のセットアップを行います。 RE社会実験の候補地としては、スマートグリッドの社会実験の対象となっている神奈川県横浜市田園都市地域の新築・既築の1,000世帯と決定しました。スマートメーターから得られる30分値の電気使用量(kWh)に関するHEMSデータを収集しました。これらを利用して、気温・電気料金データと合わせて、オプトイン方式のダイナミック・プライシングへの加入促進政策の分析を第2年度以降に行います。あわせて、節電行動・節電意識に関するアンケート調査も実施しました。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
以上の通り、当初の予定通り、研究は進捗しており、引き続き、研究実施計画に沿って、研究を進めます。また、本研究に関連する研究成果は、一部、以下の学術雑誌から出版されました。 [1] Ida, T., K. Murakami, and M. Tanaka (2016) “Electricity Demand Response in Japan: Experimental Evidence from a Residential Photovoltaic Generation System,” Economics of Energy & Environmental Policy vol. 5.1: 73-88. [2] Ito, K., T. Ida, M. Tanaka (2017) “Moral Suasion and Economic Incentives: Field Experimental Evidence from Energy Demand,” Forthcoming in American Economic Journal: Economic Policy.
|
Strategy for Future Research Activity |
第2年度にあたる2017(H29)年度では、データの計量経済学的分析に当たります。ダイナミック・プライシングの効果については、ダイナミック・プライシングへの加入率、ダイナミック・プライシングに加入した需要家のネットのピークカット効果、というピーク価格に対する加入率・価格弾力性が米国でも日本でもまだ明らかになっていません。このRE社会実験はこの点について明確な答えを出すことができます。また、電力消費に関しては、節電による消費量の削減という点が注目されがちですが、情報提供による消費者の行動変容はより継続的なエネルギー消費変化をもたらす可能性があります。本研究はこの点についても明確な答えを出すことで、節電促進政策による消費量の削減、情報提供による行動変容を通じた消費量の削減の比較検討を行い、政策的にどのようなベストミックスが考えられるかについて重要な参考材料を提供できます。 重要な経済効果で統計的に有意な推定結果が得られれば、個人属性・住宅要因・環境要因を交叉させて、政策効果を柔軟にシミュレーションできます。家族構成が単身と5人家族の場合の比較・夏の最高気温が30度と35度の場合の比較などを織り込んで、シミュレーション結果がどう変わるかを見れば分かります。当然、経済効果はシナリオによって異なってきます。さらに、社会全体で達成したい数値目標が別途存在する場合には、多様なシナリオ別に、誰がどれだけ削減すれば、社会的目標を達成できるのかを割り当て、目標達成のためのインセンティブ・メカニズムを考えます。家庭のデマンド・レスポンス・データを地域の発電限界費用データとも連結させて、社会的な費用便益分析を行うことも可能です。
|