2018 Fiscal Year Annual Research Report
家族と社会関係資本の相互作用が非認知的能力に与える影響:パネルデータの構築と利用
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16H03628
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
山村 英司 西南学院大学, 経済学部, 教授 (20368971)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
筒井 義郎 甲南大学, 経済学部, 特任教授 (50163845)
浦川 邦夫 九州大学, 経済学研究院, 准教授 (90452482)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 性差 / 非認知的能力 / 政策選好 / 企業の社会的責任 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、これまで収集したデータを用いて、小学生の頃の担任教師の性別の経済的影響について分析を行った。まず、女性教師が担任であった人は、企業の社会的責任を重視する傾向があった。さらにこの傾向は男性にのみ観察された。この結果を日本経済学会秋季大会で報告し、さらにワーキングペーパーにまとめた。現在は査読付国際専門誌に投稿中である。 「研究の目的」の一つとして、独自にパネルデータを構築し教育が非認知能力(我慢強さや、協調性、社会性)に与える長期的効果を分析することを目指していた。近年、男女の間の世界観や非認知能力の違いに注目が集まっている。そして、女性と関わることにより男性の非認知能力が変化するという発見が蓄積されている。これに呼応し、独自に回答者の小学校6年間の各学年における教師の性別情報をあつめ、現在での政策選好などに現れる非認知能力への分析を行った。これにより、教育年数などの量ではなく、担任教師の性別のような教育の質によって、非認知能力が変化することがわかった。さらに、この効果は女性教師から男子生徒に対してだけみられた。これは、女性価値観の社会的伝播を示している。
「研究実施計画」どおりに、他のデータにはない情報を独自に集め仮説検証を行った。さらに、ウェッブ実験を実施することにより、他者が企業の社会的責任に対して持つ考え方を知る前と、知った後では被験者の考え方が大きく変化したことがわかった。このようにして当初構想していた分析を深化させることが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該分野のトップクラスと評価される国際的専門誌へ投稿を行った。審査結果により掲載にいたらなかった。しかし、有用なレフリーコメントがあった。また、学会や研究会などでの研究報告を行い数多くの改良の提案をうけた。これらの提案にしたがって、再推計などを行い論文の大幅な修正を行った。論文の審査委員になると思われる研究者の意見も取り入れたために、専門誌掲載の可能性が高まったであろう。これらのプロセスはすでに想定していた通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで蓄積したパネルデータを用いて、小学生の頃の担任教師の性別の経済的影響を継続的に行っている。具体的には次の分析を進めている(1)投票行動や政策選好に及ぼす影響、(2)阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震の被災地への寄付行動への影響。さらに、今後は納税行動への影響も分析する予定である。 昨年度はウェッブ実験も行った。その結果、他者が企業の社会的責任を重視することを知ると、自身の見解も影響を受けることが明らかになった。 以上の研究結果をワーキングペーパーにまとめてから学会報告する予定である。
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