2016 Fiscal Year Annual Research Report
経済発展における重層的決済システムの役割と近代銀行史の再考
Project/Area Number |
16H03649
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
西村 雄志 関西大学, 経済学部, 教授 (10412420)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 亮太 立命館大学, 経営学部, 教授 (00363416)
正木 響 金沢大学, 経済学経営学系, 教授 (30315527)
石津 美奈 関西大学, 経済・政治研究所, 非常勤研究員 (40348834) [Withdrawn]
杉原 薫 政策研究大学院大学, 政策研究科, 特別教授 (60117950)
加藤 慶一郎 流通科学大学, 商学部, 教授 (60267862)
鎮目 雅人 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (80432558)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 決済システム / 経済発展 / 銀行制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は、3月に開催した国際ワークショップで発表することを主眼として、研究分担者を中心に研究活動を行なった。2016年度は初年度ということもあり、各自の研究テーマに必要となる一次資料の収集や関係する資料の収集が活動の主であった。当初は、そこで収集した一次資料の紹介等を含めた今後の研究のプラットフォームになるようなワーキングペーパーの執筆を考えていたが、その段階まで到達できなかった点は、次年度の引き続きの課題と考えている。 しかしながら、2016年3月20日に開催した国際ワークショップは大変有意義であった。研究協力者のC.J. van Bochove先生と石津美奈先生を招聘し、各自が英語で研究成果を発表した(以下敬称略)。van Bochoveと石津は、本科研の最終年度で参加する第18回国際経済史会議(MIT)において研究代表者と共に組織者となっており、本科研においても研究協力者として大変御貢献して頂いている。その御二人と共に各々の研究対象となる地域における決済システムについて、新たな論点を提起し合い活発な議論を展開する事が出来た。 議論の中心となった点は、銀行制度を中心とした「フォーマル」な決済システムと各地域で成立していた「インフォーマル」な決済システムとの関係性である。ヨーロッパで成立した近代的な銀行業のかたちは19世紀に急速に世界中に浸透していく訳だが、その結果として現地で従来成立していた決済システムとどのような関係性を構築していったのか、その詳細となると先行研究では十分に分析されているとは言えない。もちろん個々の研究で明らかにされている点は多いが、それらを結びつける作業は行われていない。そうした問題点を共有できた点と各自の研究テーマを互いに理解し合えた点も、次年度に向けて大きな成果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請段階では2回の研究会を開催する予定であったが、分担者間の日程調整が上手く出来ず、日本語で行う研究会をスキップして外国から研究協力者を招聘して開催する国際ワークショップに集中した。この点では当初の計画より若干の変更があった。しかしながら、2016年3月に開催できたワークショップでは、その分だけ充実した報告が並び、結果として初年度としては大変充実した成果を得られたと考えている。 国際ワークショップでは、まず研究代表者の西村と研究協力者である石津、van Bochoveが共同で執筆したコンセプト・ペーパーを報告し、各研究分担者から忌憚のないコメントやアドバイスを頂いた。このペーパーは2017年度の前半で改訂を加え、2017年12月中旬に予定している次回の国際ワークショップでフルペーパーのかたちで報告するつもりでいる。 各報告としては、日本経済史の立場から鎮目と加藤が報告した。鎮目は明治期の国立銀行条例と決済システムの関係、加藤は大正期の大阪で流通した私札について報告した。石川は20世紀初頭の朝鮮半島の事例を中心に報告し、正木は西アフリカ、特にセネガル川流域のフランス植民地の事例をギネというインド産綿布が通貨として流通した事例を報告した。石津とvan Bochoveはヨーロッパの事例から報告し、石津は産業革命期の地方銀行の事例、van Bochoveは産業革命期以前のオランダの事例について報告した。西村は1920年代のインドを事例として、東洋棉花の出張員の綿花購入における決済の方法について報告した。杉原はアジア全体を概括してアジア間貿易と決済システムの発展について報告した。 いずれも未だ研究としては最初期のドラフトのかたちであったが、翌年度以降の各自の研究の方向性を把握する上で重要な意味があった。申請時の想定から考えてもう少し進んでいたかったが、概ね妥当な水準と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度は12月15日から17日の3日間に渡って国際ワークショップを開催する予定にしている。研究代表者と研究分担者を中心に、研究協力者の石津とvan Bochoveを再度イギリスとオランダから招聘し、両氏以外にもオランダ、イギリス、イタリアから研究者を招聘する予定にしている。これらの先生方以外にも候補者を選定中であり、2018年8月の国際経済史会議に向けて本プロジェクトがステップアップできるワークショップにしたいと考えている。 その際、分担者には英語でフルペーパーを描いてもらう予定にしている。研究協力者の石津とvan Bochove、それ以外に新たに招聘するオランダとイタリアの研究者にもペーパーの提出を求める予定にしている。加えて、2016年3月に西村、石津、van Bochoveの3名で執筆したコンセプト・ペーパーについてもフルペーパーのかたちで発表するつもりである。この段階で研究分担者全員に本プロジェクトのコンセプトを英文のかたちで示し、最終年度の成果の発表に際して各報告を繋げる縦軸を確立する。 各自の研究としては、1年目からの資料収集・分析の成果を活かし、かたちとなるように研究を進めてもらう。各々の研究分担者のスケジュールがあるので、全体として集まるのは12月の国際ワークショップのみになるが、その際に完成度の高いペーパーを発表してもらえるように準備を御願いする。しかしながら、それだけでは2018年の国際経済史会議の本番まで不安なので、2018年度の社会経済史学会の全国大会でパネルを組織して報告することで、プロジェクトのメンバー同士の相互理解を深める作業と他の多くの方からのコメント等を頂き、よりしっかりとした準備をして国際経済史会議に臨めるように努めることも考えている。
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