2017 Fiscal Year Annual Research Report
Organizing and Institutionalization process of cooperation and comepetence building: An empirical analysis of audit industry in Japan
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16H03654
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
軽部 大 一橋大学, 大学院商学研究科, 教授 (90307372)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福川 裕徳 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (80315217)
内田 大輔 九州大学, 経済学研究院, 講師 (10754806)
鳥羽 至英 早稲田大学, 総合研究機構, その他(招聘研究員) (90106089)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 専門職組織 / サービス / 品質管理 / 組織化 / 制度化 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究活動の2年目となる平成29年度は、初年度に構築したデータベースに基づく実証研究の本格的実施と、それに基づく暫定的な研究成果の発信を行った。具体的には、国内外での研究成果発表と、国際査読誌への論文準備・投稿作業を行った。研究成果の海外発表については、2018年3月にはオランダ・アムステルダムビジネススクール主催の研究セミナーで成果報告を行った(招待発表)。 また、国内での研究成果の発表に関しては、2017年4月の日本経営学会九州部会、2017年10月の組織学会九州支部定例会、そして2018年02月の組織学会関西支部定例会でそれぞれ研究報告を行った。加えて、現在三本の研究論文の執筆が完了し、国際査読誌へ投稿中もしくは、投稿準備の段階にある。 大別すると、現時点での研究成果は、以下の通りである。 1)大規模パネルデータの構築(300809ケース):1960年から2015年までの監査人・監査チーム、監査企業に関するデータセット構築作業が完了した。 2)訂正報告書データの構築(19700ケース):上記データセットとの接続を意図して、新たに2002年から2015年までの訂正報告書のデータセットも新たに構築した。このデータセットは、訂正報告書を提出した企業と訂正対象となった有価証券報告書の監査人と監査法人を同定することで、誰がどのタイミングで訂正につながる過誤に関与したかを明らかにするデータセットである。 3)投稿論文の準備:上記データセットに基づいて、現在1)会計士の過誤と処罰、2)監査法人の合併過程とその理由、3)監査法人の国際化、という観点から論文を準備している。いずれの論文も英文査読誌への掲載を目標にしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)パネル・データ構築状況について:昨年度の研究課題の一つである1980年以前に数多く見られたデータセットの欠損値は、『有価証券報告書提出名簿』を活用することで、予定通り多くのケースについて補完することができた。ほぼ当初予定したパネルデータは完成したといえる。加えて、訂正報告書に関するデータセットも新規に構築し、その作業も完了した。両者を接合することで、監査法人の品質に関する問題に、実証的側面からアプローチする見通しが確立したといえる。この点は大きな成果であった。 (2)研究テーマの展開:組織化と制度化の問題について、a)合併の原因と合併効果、b)国際化、c)品質保証プロセスという3つの観点から取り組んできた。第一の研究課題については、おおよそ80事例に及ぶ個別合併事例を定性的事例研究から検討することで、個別の合併事例の特徴を明らかにすることができた。第二の研究課題については、国内の既存監査法人の競争関係と国際ネットワークとの観点から検討することで、監査法人の国際化が、海外ネットワークへの統合とは異なるロジックで進展したことが明らかとなった。また、第三の研究課題については、訂正報告書の生起頻度を手がかりにして、監査業務の過誤を個人レベルと法人レベルでそれぞれ同定し、過誤がその後の組織内での処遇に与える影響を明らかにした。 国内外での研究発表は順調に行われているものの、英文査読誌での掲載にまだ結びついていない点が課題である。そのような課題はあるものの、順調に研究作業が進捗しており、学術的にも有用な知見を見いだしつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に向けて、1)英文査読誌への投稿作業の完了と、2)監査業務の過誤の分類とその原因の探索に注力する必要がある。 合併の原因と合併効果に関する研究については、経営史もしくは会計史への専門誌への投稿完了を目標に研究活動を推進する計画である。また、国際化に関する研究は、現在英文査読誌への投稿が完了し、その結果を待っている状況にある。加えて、品質保証プロセスに関する研究も、経営組織論への投稿を当初検討していたものの、会計領域での研究の親和性がより高いと考えられるため、会計領域での英文査読誌への再投稿作業を進めている。特に、この研究については、独立変数と従属変数の操作化についてさらなる改善が必要であることが明らかとなっており、この問題を克服することで、再投稿に向けた作業を加速することが必要であると認識している。 独立変数の操作化についてさらに発展的な考察を深めるためには、過誤の頻度のみならず、過誤の程度とその種類についても、包括的な整理を行うことが不可欠であることが明らかとなっており、その問題をデータセットを改良することで、克服したいと考えている。 最終年度は、ヨーロッパ会計学会(EAA)とヨーロッパ経営学会(EURAM)でそれぞれ発表することが決定しており、参加者からのフィードバックを活用することで、英文査読誌への投稿を完了することを最大の目標として、研究活動を推進する予定である。英文査読誌での公刊が2018年度中に完了しない可能性があることも留意し、適宜ワーキングペーパーという形でも、研究成果の公表を推進する計画である。
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