2017 Fiscal Year Annual Research Report
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16H03684
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Research Institution | Momoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
朴 大栄 桃山学院大学, 経営学部, 教授 (80157114)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
異島 須賀子 久留米大学, 商学部, 教授 (20336069)
松本 祥尚 関西大学, その他の研究科, 教授 (30219521)
小澤 義昭 桃山学院大学, 経営学部, 教授 (40570205)
井上 善弘 香川大学, 経済学部, 教授 (60253259)
深井 忠 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (30400211)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 監査報告書 / Key Audit Matters / Critical Audit Matters / 情報提供機能 / 意見表明機能 / 二重責任の原則 |
Outline of Annual Research Achievements |
諸外国における「監査報告書の透明化」の進展は、監査報告書に、財務諸表の適正性についての意見表明のみならず、監査人が着目した会計監査上のリスクなどを記載する国際監査基準の改訂、米国PCAOBが公表した監査基準への導入などを通じて、欧米を中心に制度化が進められてきている。 平成29年度の本研究の中心課題は、欧米諸国において進んでいる監査報告書の長文化を提起する「最も重要と考える事項(KAM/CAM)」の記載要請を取り上げ、米国における現状ならびに制度化における問題点の把握を行うことであった。そのために、4月から7月にかけては、夏に実施予定の米国でのインタビュー調査の準備を進めると同時に、インタビュー調査内容の策定を中心に研究活動を実施した。このように、周到な準備を進めた結果、8月17日から23日までの1週間をかけて、3名の研究代表者ならびに研究分担者は、ニューヨーク、ワシントンなどを中心に、AICPA(アメリカ公認会計士協会)、PCAOB(公開会社会計監督委員会)をはじめ、会計事務所としては、KPMG、PwCの2事務所を訪問しインタビュー調査を実行することができた。 インタビュー調査においては、監査基準の公表を控えたPCAOBでは直接的な回答を得ることはできず、監査基準公表までの経緯ならびに監査環境に限った周辺事情の質疑しか実施できず、録音も拒否されるという制約があったが、関連資料の収集はできた。一方、AICPAや2つの会計事務所においては録音を含め、真摯な質疑応答を行うことができ、まずは成功裡に進んだと言えよう。 帰国後は、インタビュー調査に参加できなかった研究分担者との情報の共有を目標に、調査結果の整理を進めるとともに、最終年度である平成30年度に実施する実験調査のための資料整理と準備を中心に研究会を重ねた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第2年度は、アメリカでの会計事務所品質監視機関であるPCAOB、公認会計士の任意団体であるAICPAならびに大手会計事務所のKPMGとPwCを対象に、KAM/CAM導入の背景、現状、問題点などについてのインタビュー調査が中心課題であった。 インタビュー調査については、ニューヨークでの監査業務経験の長い小澤を中心に、既知の公認会計士等の協力もあって、PCAOB、AICPAのみならず、2つの世界を代表する大手会計事務所のインタビュー調査を実行することができた。いずれのインタビュー調査でも、各所、2時間前後をかけてインタビューを実施することができ、多くの情報ならびに貴重な資料を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である今年度は、「仮説検証のための実証的研究(実験研究・質問票調査)」に集中的に取り組む。まずは、実証的研究の準備として、平成28年度の研究テーマとした監査報告書の効果・受入可能性についての研究をさらに進めるとともに、ついで、昨年8月に実施したアメリカ公的機関ならびに会計事務所に対するインタビュー調査結果の整理に基づいて、実験研究ならびに質問票調査の内容を確定する。 実験研究においては、監査実務に携わる大手監査法人の公認会計士300人(日本:200人、アメリカ:100人を予定)と利用者200人(日本証券アナリスト協会会員、機関投資家など)をそれぞれ被験者とする二つの実験を行う。〔実験A〕 監査人は、KAM/CAMとしてどのような情報内容を記載すべきであると意識しているのか 〔実験B〕 提供される情報内容の違いは利用者の企業に対する理解度や意思決定にいかに影響するのか、また、両実験共通事項として、重要な虚偽表示リスクの程度が異なる架空のクライアント2社を設定して実験を実施する。 実験Aでは、ケースとして財務諸表、主要財務指標、事業環境情報等を提示し、それぞれについて、監査人が監査報告書に記載すべき事項をどのように判断するのか、監査人の判断の違いの重点がどこにあるのかを共分散構造分析など統計的手法により検証する。実験Bでは、実験Aから得られた監査報告書を類別化し、被験者をランダムに割り当てることによって、利用者の認識がどのように異なるのかを分散分析により検証する。 以上の実験に質問票調査を加えることにより、①「情報提供機能と意見表明機能ならびに二重責任との関係性」を解明する手がかりを提示し、②「受入可能かつ実行可能なあるべき監査報告書の方向性」を客観的な証拠に基づき帰納的に導出することによって、本研究の総括とする。
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