2016 Fiscal Year Annual Research Report
分化・複層化する原発事故避難者ネットワーク/コミュニティの類型と変容に関する研究
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16H03686
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松本 行真 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (60455110)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉原 直樹 大妻女子大学, 社会情報学部, 教授 (40240345)
石沢 真貴 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (20321995)
齊藤 綾美 八戸学院大学, ビジネス学部, 准教授 (70431484)
高橋 雅也 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (00549743)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | コミュニティ / ネットワーク / 広域避難 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は2015年9月に全域で避難指示解除になった楢葉町、2017年春に一部地域を除いて解除になる富岡町を主なフィールドに引き続き、主に自治会関係者への聞き取り調査を行っている。 仮設住宅自治会の役割の変容と今後のあり方については、科研費報告書(「東北都市社会学研究会」HPよりダウンロード可)楢葉町、富岡町双方について「震災後5年を迎えた仮設住宅自治会の現状と課題」としてまとめている(1章、2章)。その後の避難指示解除を受けた動向については「転機を迎えた楢葉町の仮設住宅自治会」(3章)で論じている。 一方で避難先での定住に向けた交流やそれにより生じる課題もあり、主にいわき市に在住する双葉町民との関係を「津波被災者と原発避難者の交流―いわき市薄磯団地自治会といわき・まごころ双葉会の事例」(4章)に、県外への自主避難者については「自主避難者の対話的交流と派生的ネットワーク―母子避難という経験の語りから」(5章)にまとめられている。 公営住宅への集約により仮設住宅自治会の役割は低下しつつあるが、それまでへの連携体制が整備されていたのが三春町内にある富岡町の6仮設である。連携の象徴であった『みはる通信』の1号から最終号までを概観し、その連携の推移と課題を論じたのが「仮設住宅自治会間の連携は可能か―三春町連絡協議会と『みはる通信』から」(6章)である。 帰町後の大きな課題は「原子力事故に対する避難体制の構築」である。帰還の意志がある多くの住民が「二度とあのような混乱した避難はしたくない」というなかでも、自治体が想定する避難体制はほぼ変わらず動員型で、現時点でとりまとめたのが「原子力災害は防災訓練を変えるのか―原発事故後の浜通り地方の取組を事例に」(7章)である。最後に避難者支援の広域ネットワークをまとめたのが「広域支援の可能性―北海道岩見沢市の「温もり届け隊」の活動から―」(8章)である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、(1)原発事故避難者との共生に向けた課題(2)公営住宅移行プロセスにおける集約の課題(3)コミュニティ統合の象徴としての祭礼の意義(4)広域避難者・支援者によるネットワーク化過程の共通性・差異性、を明らかにすることである。(1)は主に報告書5章に、(2)は2章と6章に、(4)は8章にそれぞれ平成28年度までの成果をまとめており、順調に進んでいる。 一方で、(3)についてはキーパーソンへの複数回の調査を終えているが、その周辺の関与者への聞き取りを含めたとりまとめが進行中であり、また(1)と(4)の要素が入るバリ島への避難者についても調査を進めている段階でとりまとめには至っていないという点で「遅れている」。これらを総合して「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
大きく四つある。一つ目は仮設自治会役員・会員への聞き取り調査を継続して行うことである。これにより楢葉町・富岡町の(一部)避難指示解除後における仮設自治会/区会の役割変容を明らかにする。その中に帰町後の「祭事」も視野に入ってくる。二つ目は新たに結成された公営住宅自治会役員と入居者への聞き取り(必要に応じて質問紙調査)である。「帰町」という選択も残しつつも公営住宅に入居し、そこで結成された過程やその後の動向などを明らかにし、仮設自治会との共通点・差異点を明らかにする。三つ目は避難先での定住や帰町後における交流をめぐる動向を把握することにある。避難者同士で結成したネットワーク(「まごころ双葉会」等)、遠方からの広域支援ネットワーク(「一歩会」等)、帰町者を中心に結成される組織等による活動とその課題、ネットワーク同士での「つながり」の契機と過程等を明らかにする。四つ目は海外での避難者とその支援ネットワークの実態把握である。この調査を通じて三つ目の成果と併せた国際比較が可能になり、本年度はその準備調査を引き続き行う。
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Research Products
(16 results)