Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は, まず平成28年度に実施した2件の調査について分析を行い, SNS利用リスクの楽観視と関わる認知要因を検討した。定量的なSNS利用リスクの楽観視の指標として第三者知覚量 (他者リスク推定値と自己リスク推定値の差分) を採用し, SNSトラブル被害者に対するステレオタイプや, 認知熟慮性といった個人の認知特性が第三者知覚に及ぼす影響を明らかにした。これらの調査結果を日本心理学会第81回大会や日本教育工学会第33回全国大会などで速報するとともに, 分析や考察を深化させ学術論文として投稿を行っている。また,ステレオタイプなど社会的認知の特性や, 教育の効果や効率を高める工夫, 教材評価・感性評価に影響を及ぼす個人要因など, 本研究に関わる基礎的な知見を蓄積するために, 継続的に資料収集を行うとともに,これら基礎的研究についての研究発表や論説発表を行った。たとえば,地域連携教育において質の高いSNS市民講座を実現するにあたり現実的な問題となる準備時間確保の問題について,科目間連携の活用の有効性を考察した論説を発表した。さらに, ピアエデュケーションを用いたSNS教育の有効性を検証するために, SNSリスクに関する講座を学生講師と教員とでそれぞれ実施した。今後, 効果検証結果を比較することでピア効果を定量的に明らかにし, その成果を日本教育工学会第34回全国学会等で発表する予定である。また, 年度当初の予定通り, 研究代表者, 研究分担者ともに, SNS利用者間トラブルのメカニズムと密接に関わる集団行動や集合行動について先行研究を幅広く調査・整理し, その成果を学術図書として公表すべく原稿執筆を行った。以上のように, 平成29年度も順調に研究が推進されたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
年度当初に示した計画通りに研究が進んでおり, 講座もこれまで3回実施することができた。関連する研究成果も査読付き論文誌や国内外の学会発表を中心に年度当初の予定以上に発表されていることから, 順調に進展しているといえる。。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は, 平成28年度~29年度までに得られたSNS利用リスクの楽観視に関する基礎的知見やこれまで実施した講座の効果検証結果を踏まえ, SNS安全利用に関する教材を改訂するとともに, 教材を用いた学習がSNS利用リスクの楽観視に及ぼす影響を検討する。講座改訂に際しては, これまで調査したFD研究の知見も参照して講座の到達目標 (一般目標, 個別行動目標) から再検討を行い, 講座の目的に即した効果を検証できるよう準備する予定である。講座実施に関しては, 昨年度同様に所属機関の中高生向け行事や地域連携行事などを活用して実施予定であるが, 十分な参加者の確保が難しい場合には必要に応じて大学生や調査会社モニタから募集を行うことも想定している。 また, 研究成果発表については, 昨年度に引き続き心理学, 教育学, 感性評価など幅広い領域の国内・国際学会にて成果発表を行うとともに, これらの領域の学会誌に学術論文を投稿し, 成果公表に努めたい。
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