2016 Fiscal Year Annual Research Report
感情障害へのコンパッションフォーカストセラピーの治療マニュアルの作成と効果の検証
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16H03739
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Research Institution | Tokyo Seitoku University |
Principal Investigator |
石村 郁夫 東京成徳大学, 応用心理学部, 准教授(移行) (60551679)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野村 俊明 日本医科大学, 医学部, 教授 (30339759)
川崎 直樹 日本女子大学, 人間社会学部, 准教授 (90453290)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | コンパッション・フォーカスト・セラピー / セルフ・コンパッション / 慈悲 / マインドフルネス / 思いやり恐怖 / 治療マニュアルの開発 / 臨床試験 / ランダム化比較試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、(1)コンパッション・フォーカスト・セラピー(Compassion Focused Therapy:CFT)で使用されるプログラム内容を収集・選定し、その安全性を検証し、(2)治療マニュアルとワークシート類を作成することが目的であった。 (1)研究1:CFTで使用されるプログラム内容の収集(平成28年4月~12月) 研究概要:CFTは、統合失調症、社会不安障害、不安障害とパニック障害、PTSD、摂食障害等の特定の精神疾患に適用されており、また、怒りや自信等の感情やアイデンティティの問題まで幅広く適用されている。しかし、我が国においてはコンパッションを育成する治療マニュアルは公開・出版されておらず、我が国における統一されたCFTの治療マニュアルは存在していない。そのため、上記のプログラムや書籍を網羅的に収集し、CFTで重視されるポイントを抽出し、それらを反映した治療マニュアルを作成した。プログラム内容は、新しい脳と古い脳、感情制御の三つのシステムに関する心理教育、マインドフルネス、心地よいリズムの呼吸、慈悲的なマインドセット、多面的な自己に気付く、安全な場所を作る、慈悲を妨げる10の障害、思いやり恐怖、慈悲の特性とスキル、慈悲の心を発達させる、ケース・フォーミュレーション、慈悲の代替思考とイメージ、慈悲の手紙、慈悲の行動、ホームワークであった。 (2)研究2:CFTで使用されるプログラムの安全性の検証(平成29年1月~3月) 研究概要:研究1で開発されたプログラムの安全性を検証するために、心理士6名を対象に、1回120分のセッションを8回集団形式で実施し、プログラムの安全性を検証し、上記のプログラム内容の改善と精緻化を行った。ホームワークを効果的に実施するためにイメージ課題のスクリプトを録音することやプログラムの内容や量を調整し、体験的なセッションになるよう工夫した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では平成28年度内に一般大学生40名を対象にCFTのプログラムの安全性を検証する予定であった。しかし、有効性の高いプログラムを実施するためには、予備的試行が必要であると判断し、当初の計画を修正した。具体的には、予備的試行として心理士6名を対象に、8週にわたる1回120分のセッションを実施し、プログラムの内容、量、実施マニュアルに関して詳細に検討した。そのうえで、プログラムの理解度、適切度、役立度を高める工夫を施した。予備的試行を行ったことで、慈悲のイメージの導入の際に必要なスクリプトの修正やオーディオガイドの作成、また、プログラムの内容や量の補正、プログラムの効果的な配置や実施マニュアルの作成が詳細に検討できた。ただし、この予備的試行を実施したことにより一般大学生40名を対象としたCFTのプログラムの安全性の検証は時期的に厳しくなってしまったのが上記の評価の原因である。ただし、研究成果物としては、セラピスト向けの個別CFT及び集団CFTの治療マニュアルを策定し、ワークシート類や宿題等の補助資料の一式を完成させることができたため、(3)やや遅れている、と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年5月時点で、平成28年度内に実施できなかった「一般大学生40名を対象にしたCFTのプログラムの安全性の検証」に関する介入研究を実施している最中である。同時に、平成29年度の研究計画を遂行するにあたり、個別CFT及び集団CFTを実施できるCFTセラピストの養成をしている。 平成29年度は、(1)一般大学生を対象にした個別CFT及び集団CFTプログラムの効果を検証し、(2)感情障害を抱えた患者に対する無対照試験を実施し、CFTの有効性を検証する予定である。 一般大学生を対象にした個別CFT(研究3)及び集団CFT(研究4)の効果検証では、両プログラムとも約20名を募集し、無作為に割り付けてシングルアーム(無対照)試験を実施する予定である。個別CFTは1セッション60分×8回とし、集団CFTは1セッション90分×8回とする。評価方法としてはプログラムの実施前後、1ヵ月後に抑うつ・不安尺度(HADS)、日本語版セルフ・コンパッション尺度に回答を求める。そして、上記の研究3、4が進行する中で、医療機関における研究倫理審査及び臨床試験登録(UMIN-CTR)への手続きを済ませる。 感情障害への個別CFTの効果に関する予備的試験(研究5)では、シングルアーム(無対照)試験により、感情制御の困難を抱えた患者に対して、個別CFTの安全性および有効性の検証を行うことを目的とする。なお、サンプルサイズは検定力を0.8、効果量を1.0、中断率を20%とし、13例以上を目標とする。従来のCFTに関する研究により有効性が発揮されると想定されるうつや不安症状を抱えている感情障害の患者を対象とする。評価方法としては、介入前後、1ヶ月のフォローアップ時にBDI-Ⅱ、MAS、GHQ60、OQ-45、SCS-Jを測定する。
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Research Products
(1 results)