2016 Fiscal Year Annual Research Report
不安とうつにおける未来思考性の解明:心理学・精神医学・自律神経学からの統合的理解
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16H03740
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
梅田 聡 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (90317272)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三村 將 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (00190728)
寺澤 悠理 慶應義塾大学, 文学部, 助教 (30585790)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 未来思考性 / 不安障害 / うつ病 / 自律神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
不安やうつなどの精神症状は,疾患として診断されるレベルに至らずとも,日常生活に大きな支障をもたらす状態であり,これらの背後にあるメカニズムの解明は喫緊の課題である.不安やうつにおける思考や感情の歪みに関する理解は,従来から情動処理のネットワークを注意に解釈されてきたが,これまでの筆者らの研究から,島皮質や帯状回前部を含むセイリエンスネットワークや前頭極などの脳部位が関連することが示されており,その詳細のメカニズム解明を試みた.まず,fMRIを用いた未来性思考に関する研究では,現在から想像する時間枠を近い将来,遠い将来,近い過去,遠い過去の4条件で比較した結果,遠い過去条件において,これまで言われてきた前頭極の活動が重要であることが,健常者を用いた研究から明らかになった.この成果については,次年度,疾患レベルの患者を対象とした研究に進むための足がかりが確立されたと考えている.次に,セイリエンスネットワークの機能については,島の損傷例を対象とした内受容感覚の研究を実施し,損傷前後の比較に関するデータを蓄積することができた.結果はこれまでに得られた成果と整合するものであり,理論確立に向けて,重要な支持データが得られたと考えている.内受容感覚に関する基礎的研究として,脳波と自律神経活動の同時計測手法を用いた課題も進めており,こちらについてもデータ解析を進める段階に至っている.また,神経内科的なアプローチによる研究についても,頭痛のタイプと自律神経活動の関係を探る研究が順調に進んでいる.研究遂行に当たり,研究倫理申請関係の処理で遅延が生じたが,実験の進行およびデータ解析などは順調に進んでいる.これらの総合的なアプローチにより,「脳・心・身体」の三者関係のメカニズム理解を進め,不安・うつなどの症状との関連性を明らかにするべく,次年度も研究を継続する所存である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究倫理申請の処理および対象者確保の遅れが原因で,当初の予定から3ヶ月の遅れが生じた.
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Strategy for Future Research Activity |
遅延については,今後,計画研究を同時並行に実施するなどして,なるべく早い時期に取り戻す予定である.現時点では,さらなる遅延が予測される要因は特にない.
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Research Products
(18 results)