2016 Fiscal Year Annual Research Report
高齢期の認知機能低下を適切に評価するための心理検査開発に係る包括的研究
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16H03746
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
鈴木 宏幸 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (90531418)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 佳典 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (50332367)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 心理アセスメント / 高齢者 / 認知機能評価検査 / 軽度認知障害 / MoCA-J |
Outline of Annual Research Achievements |
研究Ⅰとして、地域代表性を持つコホート研究における日本語版MoCA-Jに関するプール解析を行い、両検査の得点と年齢の関連を検討し、年齢階級別基準値の作成を行った。 東京都板橋区913名(平均73.5歳)、福岡県篠栗町2332名(平均73.6歳)、群馬県草津町609名(平均74.2歳)のデータを統合し、年齢およびMoCA-Jに欠損がなかった3525名(平均73.7歳、年齢範囲65-96歳、女性58.2%)を解析対象とした。いずれのコホートにおいてもMMSEとMoCA-Jは個別面接によって実施された。解析には総得点である30点満点を用い、年齢との関連にはPearsonの相関分析を行った。基準値とする年齢階級は5歳区切りを基本とし、比較には一元配置分散分析とBonferroni法による多重比較を行った。 その結果、MoCA-Jは年齢との相関がみられた(r=-.37, p<.01)。MoCA-Jの年齢階級間の得点比較では、65-69歳(24.7±3.1)、70-74歳(23.6±3.3)、75-79歳(22.4±3.6)、80-84歳(21.7±3.8)、85-89歳(20.1±4.3)のいずれも有意差があり(p<.01)、85-89歳と90歳以上(18.3±4.5)のみ有意差がなかった。 MoCA-Jの基準値が示されるとともに、MoCA-Jは65歳から89歳に至るまでの加齢変化に鋭敏であり、認知機能評価において有用であることが示唆された。 また、研究Ⅲaとして、MoCA-J第2版、第3版の作成を行った。平行版の作成にあたっては先行して発表されている国外の研究を参考とすることで、国際比較をする際の有用性を高めることができた。 研究Ⅳaとして、視覚障がい、聴覚障がいに対応したMoCA-Jの作成を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の通り、研究Ⅰにおいて大規模データ(N=3525)からMoCA-Jの年齢標準値を示すことができた。本研究の重点課題の1つが初年度にて達成することができたといえる。また、研究Ⅲa、研究ⅣaであるMoCA-Jの平行版作成においても、国外の先行研究も活用することで順調に作成することができた。以上のことから、本研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では研究Ⅱとして平成29年度に縦断調査を予定している。本調査を順調に遂行できるように分担研究者・協力研究者と定期的な会合および情報共有を行う。また、平行版検査の開発においては、もの忘れ外来等の臨床現場と円滑な関係を構築し、安定してデータ採取ができるように本研究専属の臨床心理士を配置する。
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