2016 Fiscal Year Annual Research Report
目撃記憶形成の探求:一瞥に人は何を見て何を覚えるのか?
Project/Area Number |
16H03754
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
厳島 行雄 日本大学, 文理学部, 教授 (20147698)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北神 慎司 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (00359879)
斎藤 洋典 名古屋大学, 情報科学研究科, 教授 (40178504)
市川 優一郎 日本大学, 文理学部, 助教 (40579116)
泰羅 雅登 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (50179397)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 短時間の視覚処理 / 記憶形成過程 / 目撃者識別の正確さ / 自然シーン / 脳科学 / 注意 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の実績は以下のとおりである。まず、瞬時の記憶にいたるまでに視覚的情報処理段階で何が起こるのかに関する過去の研究をレビューし、RSVP課題における視覚情報処理と記憶形成の処理に関する装置の準備を行った。また、数千枚に及ぶ自然シーンの視覚刺激を使用するために、MIT(マサチューセッツ工科大学)のポッター教授に使用を願い出て、その刺激の提供を受けた。その後、視覚的短期記憶の実験プログラムを作成し、予備実験に入った。また、瞬時の刺激提示で視覚的特徴が先か、それとも概念的処理が先に行われるのか、その関係を問うプログラムを作成した。これも予備実験で終わった。以上の二つの課題が進行しており、2017年度に継続される。 かなり明確で、興味深い実験結果としては、チェンジブラインドネス研究で、そのブラインドネスが起こる原因としての人物記憶における逆向干渉が原因である可能性を明らかにしたことである。これが第15回ヨーロッパ心理学会の大会にアクセプトされ発表(2017年7月アムステルダム)の運びとなった。この実験によって、チェンジブラインドネスのメカニズムの解明が進められる。 また視覚的作動記憶の実験結果として注意の役割を明らかにした研究を公刊することができた。脳科学的データとしては、奥行き近くにおけるMTcomplexの脳内機序に関する研究を公刊できた。さらにNirsデータによる研究では、認知的共感が身体姿勢の視覚的知覚を制御している可能性を明らかにできた。 また、目撃者供述の正確さが出来事の知覚時間によって影響が出るかどうかの知識を学生がどのように判断しているのかに関する調査(目撃要因に関する他の項目と共に)を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
短時間の視覚情報処理の課題としてのチェンジブラインドネス研究は順調に進んだ。特にチェンジブラインドネスに関する研究は要因計画に従った3つの実験を行うことができた。そのうちの一つの実験で、人物の入れ替えに気づかないチェンジブラインドネスの原因が、最初の人物の記憶が、置き換えられた2番目に登場した人物の記憶によって干渉を受けるとという、逆向干渉の効果を見出した。Victoria大学のLindsay教授も新しい発見と言い、この原因についてさらに実験を追加して行い、どのような要因がこの干渉に関わるのかを明らかにする研究計画を検討した。 当初の計画に関しては、瞬時の知覚から記憶の脳科学研究がメインであったが、現実には基礎的研究が中心となってしまった点があげられる。これは、厳島の担当した瞬時の知覚から記憶形成へというテーマの実験プログラムの開発に時間がかかってしまったこと、そして予備実験に取り掛かるということができたのが粘土を超えてしまったので、脳科学担当へのプログラムの提供が遅れ、また刺激提示機器から脳データ測定の機器への信号のやりとりの準備に時間がかかってしまったことがあげられる。しかし、2017年度に向けての準備がしっかりできたので、そういう意味では総合的に、研究データが産出できる準備が整のったと言える。目撃要因調査の研究ではそれなりの結果も得られ、こちらもあらたな要因(提示方法等)の検討が可能であり、概ね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は2016年度に準備した課題、新たに発見された問題解決のための実験を組んで研究の推進を行う予定である。特にミニ利多かったのは、やるべきことが極めて多いという発見であった。このことは、この瞬時の視知覚という一見単純そうに見える過程に、実は多くの要因が関与することがわかったということである。そこで、今後は以下の研究の方向性を考えていくことにする。まず、自然シーンの短時間視覚提示における概念駆動型処理(概念の同定や対象物が持つ機能の同定)と視覚的特徴処理とがどのように関わるのか、また独立である場合の処理の様式や速度を明らかにする。またそのような処理が記憶として固定するプロセスの時間的コースを明らかにする研究計画を実施する。次に、瞬間視覚提示における視覚的短期記憶の役割を自然シーンの対象と位置情報に関して検討する課題を実施する。異常の二つの研究課題に対しては、脳科学データの採取を名古屋大学と東京医科歯科大学で実施する。行動データの取得はメインとして日本大学で、また一部は名古屋大学で取得することする。 さらにチェンジブラインドネスの生起原因の可能性のある、逆向干渉のメカニズムを明らかにする実験を計画している。こちらも、その干渉が時間の影響や変化の起こるタイミングを変数にして、さらに登場人物の数の要因等をコントロールしての検討を行う。 また、目撃者の供述の正確さに影響する要因に関する調査を、調査項目に含まれる専門用語に注釈を加えた条件、平易に文章を表現した場合等を変数に検討する。可能であれば法曹界、特に弁護士からの協力を得られる可能背があるので、そちらのデータを取得することも計画している。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Cognitive empathy modulates the visual perception of human-like body postures without imitation2016
Author(s)
Oi, M., Ito, H., Saito, H., Meng, S., & Palacios, V.,A.
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Journal Title
Journal of Cognitive Psychology
Volume: 28
Pages: 319-328
DOI
Peer Reviewed
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