2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H03755
|
Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
金沢 創 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (80337691)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本吉 勇 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (60447034)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 乳児 / 知覚 / 質感 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、知覚的アウェアネス(気づきやすさ)の発生過程を、乳児の視知覚の実験を通じて明らかにすることにある。具体的には、選好注視法を用いて乳児の知覚発達を検討し、アウェアネス獲得以前の乳児の知覚世界が大人と全く異なるものであることを示すものとして計画された。本年度は、物体の明るさの変化が影の領域と光源の領域で異なることを知覚できているのか、逆にいえば明るさの恒常性が成立しているのか、といった点についての成果が得られたほか、運動視や顔認知についてもいくつか成果が得られた。また、錯視が見ているときと見えていないときで眼球運動に違いが見られることや注意と知覚に関する検討も行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度も研究は順調に進行していた。本研究計画では、乳児の視覚的アウェアネスを検討する目的で、まずは計画した陰影を手掛かりとして知覚的アウェアネスの検討を現在も行っている。また、object-baseの注意処理過程が乳児でどのように発達してくるのかを、手掛かり刺激の出現を制御し四角形が出現する位置に対する選好注視を用いて注意の働きを検討した。その結果、object-basedな注意は8ヶ月頃に発達してくることが明らかとなった。また、錯視図形に対する眼球運動については、横方向と縦方向の眼球運動を測定し、乳児が、錯視を最大化するような眼球運動を行っていることを示すことに成功した。また、分担者の成果としては、視覚系が緩やかな速度変化よりも急峻な速度変化に容易に気づくことを示す結果を得、初期視覚系には鋭い加減速を検出するメカニズムが存在することが示唆されている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も、様々な視覚刺激の変化に対するchange detection paradigmを用いた注視時間の測定を行っていく。また、change detectionのみにもこだわらず、選好注視法や馴化法も併用して検討は行っていく。計画全体の最大のポイントは、低月齢において、通常大人では検出することができない視覚情報を検出できることを示す点にある。したがって低月齢児のデータが最も重要となるのだが、特に3か月前後の月齢が低い乳児のデータを重視し、その知覚世界が「アウェアネス」の観点からどのような状態になっているのかを、様々な視覚刺激を用いて検討していく。あわせて、知覚、注意、の機能的側面、ならびにその認知神経科学的な側面についても、従来からの選好注視を用いた検討を行っていく。
|