2017 Fiscal Year Annual Research Report
〈多元的生成モデル〉にもとづく教育改革の実践と構造に関する総合的研究
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16H03774
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
菊地 栄治 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (10211872)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 賢市 中央大学, 文学部, 教授 (40222880)
易 寿也 大阪芸術大学, 芸術学部, 教授 (50781944)
勝野 正章 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (10285512)
栗原 真孝 鹿児島純心女子大学, 国際人間学部, 准教授 (70588532)
紅林 伸幸 常葉大学, 教育学部, 教授 (40262068)
白川 優治 千葉大学, 国際教養学部, 准教授 (50434254)
高田 研 都留文科大学, 文学部, 教授 (60457900)
高橋 亜希子 南山大学, 人文学部, 教授 (90431387)
永田 佳之 聖心女子大学, 文学部, 教授 (20280513)
仁平 典宏 東京大学, 人文社会系研究科, その他 (40422357)
丸山 英樹 上智大学, グローバル教育センター, 准教授 (10353377)
宮古 紀宏 国立教育政策研究所, 生徒指導・進路指導研究センター, 主任研究官 (60549129)
油布 佐和子 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (80183987)
吉田 敦彦 大阪府立大学, 公私立大学の部局等, 教授 (20210677)
和井田 清司 武蔵大学, 人文学部, 教授 (50345542)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 〈多元的生成モデル〉 / 〈一元的操作モデル〉 / 教育改革 / 教師の多忙化 / 対話的関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究プロジェクトは、2年度目の研究計画に従って、「〈多元的生成モデル〉にもとづく教育改革の実践と構造」に関する研究活動を実施した。 1.これまでのわが国の教育改革の歴史を跡づけ、とりわけ「縮小期」以降の改革の特徴を〈一元的操作モデル〉の徹底と内面支配として理論的に整理した。とくに、能力に対するまなざしと対話的関係の劣化の問題性を確認した。 2.2017年3月に実施した全国公立中学校校長・教員調査のデータの一次分析を行い、以下の知見を得ることができた。 (1)2002年実施の前回調査との比較から、教員の著しい多忙化が明らかになった。「12時間以上」という回答が前回よりも23.1ポイント増加して、49.2%に達した。(2)重回帰分析の結果、多忙化の主な原因は、「一般事務」と「部活動」であり、これに「運営事務」が続くことが明らかになった。とくに、事務職員の配置が高校に比べて手薄であることを確認した。(3)多忙化は、教員間および教員・生徒間の対話的関係を貧弱にすることをもたらしている。手ごたえのなさが現実への戦略的な適応(諦め)をもたらすという悪循環が想定される。(4)トップダウンの学校運営方式が多忙化を助長している傾向が検証された。この点は、〈一元的操作モデル〉と〈多元的生成モデル〉の関係性の証左である。 3.日本教育社会学会第69回大会で学会報告を行った結果、朝日新聞・読売新聞・毎日新聞等がそれぞれ異なる角度から本調査結果の内容を取り上げた。加えて、『内外教育』において報告の概要が紹介された。新聞のデジタル版も含めて、さまざまなメディアに取り上げられることを通して、学術研究の社会的還元の一助とすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2002年データとの比較に加えて、データの構造的な分析を行うことによって、単なる仮説検証型の研究にとどまらない探索的な課題発見を達成することができた。まだ分析の余地を残しているが、〈一元的操作モデル〉と〈多元的生成モデル〉という本研究プロジェクト独自の理念型を通して教育現実を的確に捉えられることを示す実証的な裏付けを得るに至っている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度においては、さらに全国調査データを個別の改革テーマ別に分析を行い、理論的な深化を図ることとする。また、研究分担者のメンバーが個々に分析を進めている事例を持ち寄り、オルタナティブな教育改革の未来像をデザインするための準備を丁寧に進めていきたい。
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