2016 Fiscal Year Annual Research Report
道徳の教科化と教育の保守化をめぐる学校現場の政策受容過程に関する総合的研究
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16H03788
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Research Institution | Tokoha University |
Principal Investigator |
紅林 伸幸 常葉大学, 教育学部, 教授 (40262068)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 瑛仁 大阪大学, 人間科学研究科, 助教 (30756028)
川村 光 関西国際大学, 教育学部, 教授 (50452230)
冨江 英俊 関西学院大学, 教育学部, 准教授 (70366805)
越智 康詞 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (80242105)
鈴木 和正 常葉大学, 教育学部, 講師 (80759077)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 道徳の教科化 / 教育改革 / 教師文化 / スイスの教育 / 道徳教育の実施状況 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年に小学校、平成31年に中学校において「道徳の教科化」が完全実施される。この戦後道徳教育の大転換が持つ社会的な意味を探るとともに、それへの学校現場及び教師の対応の観察を通して現在の学校及び教師の特徴を捉えることを本研究は目的としている。この研究課題に向けて、平成28年度は①道徳の教科化の社会的・歴史的文脈に関する理論的整理、②道徳の教科化の受容過程に関するフィールドワーク、③道徳の教科化の受容に関する質問紙調査、④グローバリゼーションと教育の保守化に関する海外視察調査を実施した。 ①については、我が国の道徳教育について蓄積された先行研究の検討を行うとともに、現在の教育改革の特徴の確認作業を行った。その成果の一部は所属大学の紀要等において報告を行った。②については、小学校での道徳の授業の取組を観察すると共に、道徳の研修に参加し、教師たちの意識の確認作業を行った。③については、教科化以前の道徳の授業の実施状況に関する質問紙調査を実施した。現場の多忙の原因にアンケート調査があるという現実を踏まえて、教師の負担を最小限にするために、Webでの調査を採用した。1年間を総括してもらう調査の性格から、年度末の実施となったこともあり、回収数は約400であった。現状の把握には十分可能なデータであり、平成29年度には実態調査として結果を報告する予定である。④については、部分的直接民主主義を特徴とするスイスの視察調査を行った。そこではジャスト・コミュニティ・アプローチの提唱者であるコールバーグの共同研究者であったFritz Oser教授(University of Fribourg )からレクチャーを受けることができた。 以上、5年間の長期的研究としては、順調なスタートを切ることができた。なお、平成28年度の研究成果については随時紀要論文等を通じて公開していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に示した通り、年度当初に計画していた研究作業は順調に進展している。とりわけ研究課題①に関わって、メンバーが研究成果を個々に発展させた結果、3編の論考を発表し、道徳の教科化に向けて学校現場に様々な提言が行えたことは大きな収穫であった。 また、教科化実施後の道徳の授業の実施状況との比較研究のための基礎データを作成するために実施した質問紙調査に、多くの小・中学校教諭にご協力いただくことができ、現状についてのデータを作成することができたことは大きな収穫であった。ただし、多忙への配慮からweb調査を選択したこと、1年間の実施状況の総括的な調査で或る事から年度末の実施となったことなどにより、期待した回収数には届かなかった。 海外視察については、コールバーグの共同研究者であったFritz Oser教授(University of Fribourg )からレクチャーを受ける機会に恵まれたこと、スイスの国民教育の実際に触れることができたことは、当初想定していた成果を上回る収穫であった。また、平成29年度の海外視察(ドイツ)の準備をスタートすることができた。 道徳の教科化の実施に向けての準備の観察については、現場でその作業がほとんど開始されていなかったため、計画通りの実施とはならなかった。ただし、準備が開始されていないことが明らかになったこと自体が大きな研究成果と考えている。 以上、全体として研究の進捗はおおむね順調であり、次年度以降の実施に大きな支障はない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は道徳の教科化の移行期間(小学校は完全実施の前年)にあたるため、本研究の中心課題である移行期の学校現場の対応に関するエスノグラフィーの本格実施と、それを補完する分析枠組みに関わる理論的研究、海外視察調査を実施する。また、平成28年度に実施したWebアンケートのデータ分析と結果報告を行う。 ◇研究1 平成28年度から開始している新学習指導要領の内容の検討と、道徳教育改革の歴史的・社会的文脈の検討、現在進行中の教育改革に関わる答申等の分析作業を継続して実施する。 ◇研究2 小学校における道徳の教科化に向けての準備状況に関して、継続的なフィールドワークを行う。また、教員へのインタビュー調査を実施する。 ◇研究3 海外の道徳教育、市民性教育の現状を把握するため、ドイツの視察調査を実施する。既にChristine Sälzer教授(School of Education of the Technische Universität München)にコンタクトをとり、準備に入っている。 ドイツの道徳教育研究者とのミーティングと、初等・中等教育学校での実践の視察を行う予定である。 ◇研究4 平成28年度に実施した道徳の教科化以前の道徳の授業の実施状況に関する調査(Webアンケート)の分析作業を行い、結果の報告を行う。
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Research Products
(4 results)