2017 Fiscal Year Annual Research Report
Longitudinal Study on Typing and Intervention Effects of Hearing Impaired Children with ASD
Project/Area Number |
16H03809
|
Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
濱田 豊彦 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (80313279)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長南 浩人 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 教授 (70364130)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 発達障害 / 聴覚障害 / 談話 / 視線分析 / 全国調査 / ASD |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、①全国調査の集計報告と②談話の特徴と視線の関係の分析、③ASDを合併する聴覚障害児の介入研究を実施した。 ①全国の聴覚障害特別支援学校を対象に実態調査を実施し、準ずる教育課程にいる聴覚障害児の1/3が発達障害を合わせ有すると推測された。その成果を日本教育新聞で報告した。 ②対象児は、小学校に在籍する定型発達児34名、聴覚障害児17名、ASD児11名、ASDのある聴覚障害児8名に対し、4コマからなるイラストを提示して説明させる課題等を実施した。イラストを見ている時の視線分析と談話の特徴について4群で検討を行った。質的評価低群は、「一文で説明するにも関わらず一文における有意味語数は少ない」「登場人物の行動意図や動作主が述べられていない」「話を説明する上で必要な要素がない」「無意味語が多い」「直接話と関係ないことを話す」などの理由により話の分かりづらさが生じていた。注視していたものが談話に影響を及ぼす場合が多く、特に主語の脱落や、心情を示す語が見られないとき、そのものに対する注視が少ないことが多かった。また、視線としては追うことができているものの、うまく表現できていない児童もいた。その場合、大人が介入するとイラストの内容に即して話すことができており、談話をする上で必要な視覚的な認知面に課題はないものの、言語力など表出面に課題があることが考えられた。また、イラストの内容と直接関係ないことを話す児童もおり、その場合最も注視しているものから自分の経験などに基づいて想像を膨らませて話していると推測された。 ③発達障害を合併する聴覚障害児に対して夏休みを除く隔週に19回の指導を実施した。視線分析による解析では合併事例の中には視線の停留時間が短く集中してものを見ること自体に苦手な者もおり、来年度以降も集中力を高めるとともに見やすさを改善する条件の整理なども行っていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、①全国調査の集計報告と②談話の特徴と視線の関係の分析、③ASDを合併する聴覚障害児の介入研究を実施した。 ①に関しては聴覚特別支援学校の調査を行い集計報告も完了した。この報告に関しては日本教育新聞にも取り上げられ、準ずる教育を受けている聴覚障害児の約1/3に発達障害様の困難のある事が示され、また聴覚障害児の中に発達障害を合併する子供たちがいることの認識がこの10年で教員の中にも浸透したことが明らかとなった。難聴学級および通級指導教室を対象とした調査は既に終えた。H30年度に集計報告を行う予定である。 ②に関しては過去2年間を通じて計70事例の談話と視線の関連を検討した。聴覚障害単独児は内容的にもわかりやすいとの評価が得られているのに対して、ASDを合併すると内容語の数が極端に減り聞き手の介入回数が増えることが示された。ASDを伴う群全体が視線においても異常を示すというよりも、いくつかの逸脱典型例の中で視線の課題があることが示唆された。今年度は4枚のイラストを用いた課題分の分析を行ったが、数字の追従課題や一枚ずつイラストを提示する課題なども行っており、あとは分析するばかりとなっている。②は本研究の根幹をなす部分であり、今後も順調にデータ数を増やして行きたいと考える。 ③縦断的介入は常に10人前後の合併事例に対して年間20回程度の指導を行い、その成果や課題について学校教員との意見交換も行えている。以上のことから概ね順調に進展していると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)実態調査:全国調査に関して通常学校の中の難聴学級に在籍する発達障害を併せ有する聴覚障害児の実態調査に関してH29年度末に実施した。その集計と公開をH30年度に行う予定である。 (2)談話の類型と視線の関連:(a)ASDに起因する問題と聴覚障害故に生じる課題を鑑別する手段として、日本語版CCC-2「子どものコミュニケーション・チェックリスト第2版」の聴覚障害児版を試案して、特別支援学校もふくめて①で得られた合併群と聴覚障害単独群との間で比較分析を行う予定である。CCC-2はSLI(特異的言語障害)の検出が可能とされているが聴覚障害ゆえの言語獲得の遅れも同様に検出でき、ASDに起因する対人的課題と区別することができることが期待できる。(b)談話の特徴と視線の関係の分析において、過去2年間で既に70例に関しての分析を行った。ASDと聴覚障害の合併群の中の平均から外れている逸脱群の中に談話と視線の関係が特徴的である典型事例を整理して、類型化を進めていきたい。 (3)縦断的な介入研究:ASDを合併する事例の中に視線の停留時間が短くそのために場面のテーマを読み取れないのではないかと推測される者があった。注意の喚起や視線の誘導を入れながら談話・コミュニケーション力全体の向上をはかり、体系的な指導法につなげていきたい。 (4)最終年度(H31)に向け教員研修用の教材作りのためのワーキンググループを発足させこれまでの知見を踏まえつつ検討を深めたい。
|